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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第61回〉
2016年 1月

年明け最初の大阪料理会。新春らしく新たな試みやテーマが盛り込まれた定例会となった。新たな試みとは、試食順をこれまでのような担当別ではなく、コースの流れにそったものとしたこと。よって今回は、前菜に始まり茶菓(デザート)で終わるという趣向が取り入れられた。新しいテーマとしては、食材ではなく「糀(こうじ)」に着目。これを店でいかに料理に取り入れていくかが問われるものとなった。


古谷 文男さん 古谷 文男さん
法善寺 割烹「花和清」
ぐるなび
浦上 浩さん 浦上 浩さん
割烹「石和川」
お店HP
ぐるなび
竹内 一二さん 竹内 一二さん
堺「竹うち」
お店HP
ぐるなび
古谷 文男さんの前菜 浦上 浩さんの献立 竹内 一二さんの献立

◆1月のテーマ食材「糀」その1


甘糀
節分 酒粕汁

日本料理人は調理の中において日々様々な発酵食品と接している。中でも糀(こうじ)を使った食品や調味料は日本料理に欠くことのできないものとなっている。こうした中に店で生きた糀を活用できないだろうか。今回、浦上氏より提案があったのが「甘糀」である。甘糀は、米3号でおかゆを作り、2リットル程の水を入れて温度を下げ、そこに800gの米麹を加えて15時間程度保温を続けて作られる。この保温期間を伸せば酸味を加わり、その味わいはさらに複雑なものになってくる。糀といえば日本料理では酒粕もよく使われる。今回はこの酒粕にこぼれ梅と納豆を加えてのポタージュ風な酒粕汁が披露された。椀種は節分を意識した鰯そして田辺大根・高山牛蒡が使われている。吸い口に、金柑胡椒と蜜柑胡椒が添えられた。

◆1月のテーマ食材「糀」その2

甘糀おこわ

甘糀を漬床に活用するという発想から生まれた逸品。野菜類を先ず塩漬けにし、次に甘糀に漬け、最後は味噌と甘糀を混ぜた味噌に漬けておく。この漬床には野菜だけでなく、造身で残ったものなども漬け込んでおく。餅米とうるち米を櫻花塩漬けで炊いておき、おこわを作るのだが、これに甘糀を使って漬けた野菜や魚などを適宜な大きさに切って天に盛って供された。この甘糀を使った漬床には、目刺しや赤海鼠なども漬け込まれており、その面白い食感と味わいの変化には驚くべき発見があったといえよう。




【総評】

酵母が生きている甘糀。生きている糀が生み出す味わいの変化に参加会員からは多くの驚きの声と質問が寄せられた。また甘糀を使った漬床が生み出す味わいに対して「目刺しがこれほどに旨くなるとは驚きだ」といった声が印象的だった。また節分に因んだ酒粕汁ではポタージュ風なとろみを出すために使われた納豆への意見も少なくなかった。節分で大豆ということ以外にも、納豆の大豆ではなく粘りの部分だけを抽出して汁に活用するというアイデアは非常に参考になったという声があった。また吸い口として添えられた、浦上氏自作の金柑胡椒や蜜柑胡椒へも作り方を是非教えて欲しいという質問が相次いだ。食材だけをテーマにするのではなく、調理の幅と深さをさらに拡げる今回の浦上氏の探求心溢れる試みは賞賛に値するものだといえよう。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆