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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第63回〉
2016年 3月

大阪市内の桜もほころびはじめ、すっかり春めいた陽気。本定例会では上野相談役が、休席となった畑会長の代理役を務めた。担当会員3名によるテーマは「精進」そして「春の野菜尽くし」。前菜からはじまるすべての料理をコース仕立てとし、その中にテーマを探っていくという新しい試みがなされた。


吉良 健太郎さん 吉良 健太郎さん
料亭「深川」
お店HP
ぐるなび
大屋 友和 大屋 友和さん
日本料理「翠」
ぐるなび
松尾 英明さん 松尾 英明さん
千里山「料亭 柏屋」
お店HP
ぐるなび
吉良 健太郎さんの前菜 大屋 友和さんの献立 松尾 英明さんの献立

◆3月のテーマ「精進」

精進春仕立て椀

精進をテーマにしながらも、その精進でどこまで深い旨味を追求できるか。また現代の客の味覚に十分に応えられるものとなるか。今回の椀で表現されるものは「春」。この春を三つの色と味わいで楽しめる趣向となっている。出汁には、干し椎茸と昆布とそして煎り大豆。しかも大豆は浅煎りと深煎りの2種類を使い分けている。これに蕪・キャベツそして白菜を加え、最後に煎り米の香りが移されている。椀種には、人参胡桃(くるみ)の葛豆腐と煮梅と椎茸揚げ焼きに針絹莢房。椎茸は原木を使用し、傘下のみを揚げ、そして焼くことでひとつの椎茸から上下異なった味わいを引き出している。また、ほどよく塩味が抜かれた煮梅の快い酸味が精進出汁と絶妙に調和している。まさに見事の一言に尽きる精進椀と云えよう。



鰻擬(うなぎ)

精進をテーマにした焼き物。鰻擬(うなぎもどき)は、よく精進料理では山芋の摺りおろしなどを用いた料理法などが知られてきた。しかし、その味わいや食感は見た眼擬きの域を超えるものではなかったようだ。今回はこの鰻擬きを一から見直し、本物の蒲焼きにいかに近づけるかに挑んだ一品となっている。先ずは生地だが、摺りおろした蓮根を煉ったものが使われている。これに牛蒡の繊維を潰したもの、汲み上げ湯葉と木綿豆腐の裏漉しと片栗粉を混ぜ合わせ食感が整えられている。これをクッキングシートに鰻皮に見立てる海苔を並べ、その上に成形。シートごと揚げ、タレを掛けながら煮詰め、照りがつけられている。




【総評】

精進でここまで出来るのか、という評価が多くあった。また今回の精進の本来の狙いは、いわゆるインバウンド(増加する海外観光客)を想定したものであることが松尾氏から語られた。ベジタリアンはもちろんイスラムのハラル食などを考えた時、日本料理の文化のひとつである精進料理を見直すことは意味のあること。そのことへの問いかけとして今回のテーマも選ばれたという。また精進を考えることは、現在では常となっている昆布と鰹の出汁というものを再考する契機にもなったことが発表された。総評として上野相談役からは、「今回の精進は日本料理の未来に大きな可能性を感じさせてくれるものであった。さらに皆でこれを突き詰めていくことで、新たな道が拓けていくのではないか」とのコメントをなされた。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆