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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第64回〉
2016年 4月

今回の定例会では担当の3会員から「香り」というテーマが出された。料理の香りにも口中香など縦に抜ける香り、そして横に広がる香りと様々ある。初夏らしい香りをテーマにした四月の大阪料理会。食材から調理法に至るまで多種多様な香りへのアプローチが披露された。


長内 敬之さん 長内 敬之さん
旬鮮和楽「さな井」
ぐるなび
山本 英 山本 英さん
片町「はしま」
お店HP
ぐるなび
荒木 宏之さん 荒木 宏之さん
大阪料理「araki 8823」
お店HP
ぐるなび
長内 敬之さんの前菜 山本 英さんの献立 荒木 宏之さんの献立


◆4月のテーマ「香味の妙」

三島独活と伊咲 若草変わり巻き

独活はかなり終盤を迎えてはいるが、地元三島地区の伝統食材ということで選択された。イサキは3枚におろした後に昆布〆に。次に色だしして形を整えたレタス。三島独活は10p程度におとし塩麹と味醂・酒でのばして塩梅したものに皮ごと一晩漬け込んでいる。
この独活とイサキを合わせ、先ほどのレタスで巻き、今回は二種類の漬け地で供された。ひとつは、独活の枝葉など細い部分を桜チップでスモークし、濃口・味醂・酒に漬けた(いぶし)醤油。もうひとつは、独活を漬けた塩麹の汁と昆布酢を同割にしたものである。



大阪しらす清茶椀仕立て

本年も四月から大阪湾のしらす漁が始まった。これとほぼ同時期に楽しめるのが新茶。今回はこの初夏の2つの味わいを一椀に仕立てるという趣向になっている。シラスは釜揚げとし、先ほどのレタスの残りと高槻名産の寒天を煮干し出汁で固めている。新茶は真昆布で一晩かけて水出汁している。先ほどのシラス寒天を小口に切り出して軽く炙り椀に盛り込み、これに新茶と真昆布出汁を調味したものを張って仕上げている。透明度の高い高槻寒天の中に見えるシラスは美しく、また新茶の香りとシラスが醸し出す海の香を椀に閉じ込めた本椀の旨さはまさに絶妙といえよう。

生しらすの沖漬け

沖漬けからヒントを得た一品。生しらすをそのまま醤油糀に漬け込んでいる。トロリとしたシラスの旨さ。鮮度が高ければそれだけ旨さを増す。酒肴には最適だろう。






【総評】

独活をスモークしたもので作る、いわば特製の「いぶし醤油」への意見が多くあった。発想が非常にユニークであり、また汎用性も高い。醤油の香ばしさも同時に味わうことができたとの賛辞が寄せられた。ただ、桜チップでスモークしたことで独活の香りがなくなってしまったのは残念だったとの声や、イサキの皮そのものに着目すればさらに良くなったのではないかとの評もあった。大阪しらすと新茶の椀には、さっぱりと爽やかな味わいに驚いた、という声があがった。またシラスの臭みを感じさせることなく、特に高槻寒天の透明感は見事なもので、運営委員からは「まるで水晶を思わせる美しさがある」とのコメントも述べられたのが印象的であった。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆