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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第68回〉
2016年 8月

食材をテーマとした発表が多い中、調理法や料理の型そのものに対して一石を投じる発表も見られるようになってきた。今回の試作では、ひとつはいわば料理の供し方への提案であり、もうひとつは昔ながらの料理の型に対しての、異なった視点からの料理提案ともいえよう。ワインに合う日本料理のコーナーでは、ワインの選択そのものへの研究発表も行われた。


杉本 亨さん 杉本 亨さん
浪速割烹「和亨」
ぐるなび
岩渕 貴生 岩渕 貴生さん
太閤園「淀川邸」
お店HP
ぐるなび
島村 雅晴さん 島村 雅晴さん
天満「雲鶴」
お店HP
ぐるなび
杉本 亨さんの前菜 岩渕 貴生さんの献立 島村 雅晴さんの献立


◆8月のテーマ「饅頭」

穴子菊花饅頭

饅頭と名の付く料理には芋系の生地がよく使われるが、これを生菓子のごとく手亡豆を使って作ってみるのが今回の試作の狙い。和菓子ではよく使われる豆も、和食の世界では使われなくなっている。そうしたことへ一石を投じる料理といえよう。手亡豆をゆがき、差し水をしながら50℃まで調整ししながら時間をかけて炊いていく。豆が柔らかくなればこれを潰し水濾しする。豆腐と同様に「呉」を沈殿させ上澄水を捨て、水替えを行う。そしてこれを晒し布で絞る。生濾した餡に薄力粉、上用粉を練り込み蒸して捏ねながら冷ましていく。白木耳は戻して炊き、蓮の実は塩茹でに。穴子は煮穴子にしている。蓮根の皮を剥いて摺り下ろし先ほどの具材を合わせ餡種としている。実際に和菓子で使われている道具を使い、菊花に成形された饅頭の完成度は素晴らしい。



【総評】

「仕上がりの美しさと生地から味わいとれる手亡豆ならではのほんのりした甘味が良い」。こうした感想が多く聞かれた。ただ料理として食する場合どうしても生地の味わいが薄く、またパサついた感じがあるので、揚げてみるという手法も考えられるのではという意見が寄せられた。また餡自体にももっと味わいがあればさらに良かったという評も聞かれた。 運営委員からは「手間がかかる和菓子の技を、料理に生かしてみよう」、とするその熱意と努力が素晴らしいとの評がなされた。試作料理として、非常に示唆に富んだものであったといえよう。

  大阪料理会



特別テーマ 〜ワインに合う日本料理を考える〜

◆第四回に提案されたテーマと趣旨:「造り身とワイン、ワイン成分からの選択基準」

日本料理に合うとされる日本の葡萄を使ったワイン。その理由のひとつとして日本産ワインはその含有する鉄分が少ないところが指摘されています。鉄分が少ないと魚介の脂分との酸化作用が少なくなり生臭みを感じにくいというわけです。ただ鉄分が少ないワインというのは、ある種の旨味も少なく物足りなく感じますが、逆にこれを補うのが料理だと云うわけです。今回は、様々なワインが販売されている中でも日本産葡萄をシュールリー法で醸造したものに着目。これを白と赤の2タイプに分けて検証しています。


<評>
日本産ワインは海外のワインと比較するとその味わいに良くも悪くも違いを感じます。しかしその味わいをしっかりと把握し、日本料理との相性の中でうまく生かしていくことができるのではないか、というひとつの問いかけとして面白い発表でした。


造り身とワイン

<担当会員:島村雅晴氏>

最初のワインは「甲州の白」。合わせる造り身は鱸。三枚におろした鱸の皮目に胡麻油を塗り、薄塩して炙っています。また、添えタレには醤油に煎り酒を合わせたもの。付け合わせにはオクラを湯がいて叩いたものと、同じく湯がいた蓮根を薄味に炊いたもの。これらを焼き海苔と合わせ鱸と共に盛り合わせています。


大阪料理会

<評>
蟹とワイン。どうなるか興味深い試食となりましたが、今回の試食ではミソを甲羅焼きにしているところに赤ワインとのマッチングの素晴らしさを感じた、という多くの評が寄せられました。発表にあたって島村氏は「日本産ワインで、日本酒と合わせた時とは違った料理の味わいや感じ方が演出できるのではないか」とコメント。つまりは日本産ワインをもっとよく知ることで、日本酒にもワインにも合う料理の可能性をもっと追求できるのではないか。今回の試飲&試食の中にはそのための多くのヒントが含まれていたように感じました。

蟹とワイン

<担当会員:島村 雅晴氏>

蟹との相性も良いとはいえないワイン。今回は日本産ワイン「ベリーA」での試飲と試食です。蟹は毛蟹。毛蟹は甲羅をはずし、ミソをとりだし「甲羅焼き」としています。焼き上がりに淡口を少し落とし香りづけをしています。蟹身は蒸して先ほどのミソで和えます。


大阪料理会


撮影/藤澤 了 文/笹井良隆