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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第70回〉
2016年 10月

大阪料理会は今回で第70回を迎えた。開会に先立ち畑会長から、コツコツと積み重ねた70回であり非常に意義が大きい。これまでに発表された料理だけを並べても大阪料理の膨大な財産・遺産となっている。今後もさらに皆で精進努力を続けていこうではないか、の激励がなされた。


久保 是人さん 久保 是人さん
おおさか料理「浅井」
お店HP
ぐるなび
大引 伸昭 大引 伸昭さん
大阪あべの辻調理師専門学校
お店HP
前田 武徳さん 前田 武徳さん
東大阪「菜ばな」
お店HP
ぐるなび
久保 是人さんの前菜 大引 伸昭さんの献立 前田 武徳さんの献立


◆10月のテーマ「寒鯛」

寒鯛と秋茸 生白子(しらす)醤焼き

寒鯛と秋茸 生白子(しらす)醤焼き

大阪と鯛料理は非常に深い繋がりをもっている。かつては大阪から多くの鯛料理が発信されてきた。今回はそのような思いも合わせ歓迎したい一品。しかも単なる寒鯛を使うのみでなく、同じ大阪近海の白子(シラス)を合わせた料理となっているところも見どころ。鯛は上身として薄塩。この上身を地に漬けるわけだが、今回使用されているのが「生シラス醤」。これは大阪湾の生シラスを淡口醤油で三ヶ月間漬け込んだものに酒と味醂で調味した地である。シラスそのものはほとんど溶けてしまっているが独特な味わいと旨味が凝縮されている。今回はこの地に約40分間浸けている。共通テーマの茸には占地・舞茸・松茸を使用。これらをいったん油で炒めた後に、昆布出汁で洗い、さらにこれを旨出汁で炊いている。この茸出汁と鯛を浸けていた生白子醤を卵黄と合わせ湯煎にかけ裏濾したものが和え衣となっている。



【総評】

かつての料理屋には、その店ならではの調味料があった。今回の試作はそういった意味で自店の調味料を考案するということで非常に意義の大きなものではないか、とする評が運営委員などからも寄せられていた。また他の声としては、「食べた後、美味しさが長く口中に残るように感じられた」。「今回はシラスを3ヶ月間漬け込んでいるが、1年間以上漬け込めばさらに良くなるのではないか」といった意見などもあった。またシラスには消化酵素があることから、焼き物とした場合は魚介そのものの身肉を柔らかくする効果も期待できそうだ、とする意見も聞かれた。また面白い視点としては生シラスが入手できるようになったのだから、シラスをアンチョビ感覚で様々に活用してみてはどうか、といったアドバイスなども寄せられていた。

  大阪料理会



特別テーマ 〜ワインに合う日本料理を考える〜

◆第6回に提案されたテーマと趣旨:ワインに合う「米」と「果実」

ワインに合う日本料理を試作するシリーズもいよいよ今回で最終回を迎えた。様々な観点からの試作がなされた本シリーズ。これらは何も実際にどのワインにどう合うといったことを目的に行ったものではない。「ワインに合う」ということを狙いに調味料や食材や調理法など新しい日本料理のアプローチを試みるものであった。最終回は、米と果実を考えることがテーマとなっている。

松茸麹和え
<評>
国産ワインが米と合うという発想から麹を和え衣として活用できないか、という発想からの試作。淡い和え衣と濃厚な鯛味噌などの調和も良い。


松茸麹和え

<担当会員:前田 武徳氏>

日本産ワインは「米」との相性が良い。これを料理で裏づけるのが狙い。米麹を同割の酒と味醂に漬け、これを布などでくるみ保温し発酵させる。麹を擂り鉢ですり、淡口で調味。菊の花を吸地に漬け、松茸は塩をふり酒をかけアルミにて蒸し焼きに。前盛りにはワインビネガーで作った蕪漬と鯛粗の鯛味噌が付けられている。


大阪料理会


撮影/藤澤 了 文/笹井良隆