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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立〈第73回〉
2017年 1月

新春最初の大阪料理会は、縁起良く「笑門来福」をテーマとする前菜からスタートした。また前年度から設けられた特別テーマ「次代へ繋ぐ和食材」は、棒鱈と金海鼠が選ばれ、金海鼠は二品の試作料理が発表された。料理屋からの需要の減少に加え、作り手も激減している金海鼠。これからの日本料理に、中華食材ではなく和食材として今一度蘇ることができるか、試作発表にも大きな期待が寄せられていた。


山本 英さん 山本 英さん
片町「はしま」
お店HP
ぐるなび
河村 幸貴さん 河村 幸貴さん
割烹「作一」
お店HP
布谷 浩二さん 布谷 浩二さん
北新地「うの和」
お店HP
山本 英さんの前菜 河村 幸貴さんの献立 布谷 浩二さんの献立

◆1月のテーマ「寒鰤」

寒鰤大根 白味噌仕立て  

寒鰤大根 白味噌仕立て

【料理について】
鰤大根は大阪では定番の家庭料理。それを料理屋として、しかも今様にどのように料理するべきか。そのひとつの提案として供されたのが今回の河村氏の試作だったのではなかろうか。薄塩した鰤を味噌漬けにし、大根は風呂吹き程度に仕上げられている。出汁と白味噌に赤味噌も加減調味し、霜振りした鰤を入れて火を通してから陸あげに。白味噌には薄葛がなされている。白味噌の旨味を鰤そして大根にもしっかりと含ませた新しい鰤大根料理だといえよう。



【総評】

発想の面白さやアプローチの斬新さに賛辞の声があがった。しかし料理としての位置づけを懸念する声も聞かれた。この料理は果たして、「炊き合わせなのか、椀物なのか?」。また河村氏の狙いに反して、味噌漬けされたはずの鰤から、味噌の味わいが感じられない、との意見も多くあった。また白味噌汁になされた薄葛処理には、「不要なのでは?」というコメントがあった。運営委員からは「鰤は味噌漬けではなく、白味噌で時間をかけて炊くべきだったのでは」という意見も寄せられていた。

  大阪料理会




特別テーマ 〜次代へ繋ぐ和食材十選〜

第2回に選択されたテーマ『棒鱈』と『金海鼠』


海老芋と棒鱈
<総評>
本試作料理には様々な意見が寄せられた。河村氏の意図する狙いが面白いとする意見もあれば、そもそも棒鱈は崩れないように炊くべきではないかとする意見も聞かれた。また、日本料理の世界では、椿の葉を入れるなど、棒鱈を崩さないための先人の知恵もある。そうした素材への工夫をまずは研究すべきではないか、とするコメントも寄せられていた。また運営委員の中からは、ひとつのアドバイスとしていわゆる棒鱈の「くず」を有効活用するのであれば、それを共に包んで揚げるという手法もあったのではないか、という意見も聞かれた。運営委員は「今回の試作には料理への意欲が強く感じられたが、せっかくの特別テーマなので料理という観点よりも、素材そのものへどう向き合うかという点にもっと注力いただきたかった」とのコメントが寄せられていた。
 

河村幸貴氏の献立
『海老芋と棒鱈』

<料理について>

棒鱈はもどす作業が非常に長時間にわたり、また崩さずに戻すことも難しい食材。そのために敬遠されるようになったのかもしれない。今回、河村氏が棒鱈を選んだのは、戻す行程において崩れてしまった棒鱈をいかに有効活用できるか、まさにそこにポイントが置かれた試作料理であった。棒鱈は米のとぎ汁で2時間程度戻し、常の如くに炊いていく。またこの出汁を使って海老芋も炊いている。今回は、崩れた棒鱈で荒叩きとつぶしたものをミキサーを使って作っている。海老芋の中をくり抜き、これに先ほどの崩れた棒鱈を混ぜ射込んでいる。崩れてもしっかりとした棒鱈の味わいや旨みを、様々なかたちで活用できればという狙いがしっかと見て取れた一品だったといえよう。


大阪料理会


撮影/藤澤 了 文/笹井良隆