今月の献立 〈第32回〉 2013年 8月 |
かつて経験がないような猛暑に見舞われた第32回の大阪料理会。本会で取り上げられた前菜テーマは、重陽ならびに観月。中でも重陽の節句は、旧暦での扱いであれば食材的にも広がりが出たであろうが、新暦での取り組みに担当者の苦労が窺われた。今後、料理における前菜を考える上においては旧暦の中でこれを考えていくべきではないか、との意見が松尾運営委員や上野相談役から提案された。当日は料理の試食ならびに討論に加えて、ヒガシマル醤油(株)の真岸研究員より「醤油と出汁、その減塩効果」についての講演ならびに試飲が行われた。さらに会の締めくくりとして上野相談役より「大阪割烹の歴史」についての話がなされた。 |
長内 敬之さん 旬鮮和楽 さな井 |
島村 雅晴さん 雲鶴 |
長内 敬之さんの献立 | 島村 雅晴さんの献立 | 撮影/藤澤 了 文/笹井良隆 |
【総評】 菊花重陽の五種盛前菜。非常に手の込んだ菊尽し料理に賞賛の声が多くあがった。中でも金目鯛菊花造りに掛けられた蕃茄(トマト)醤油に対して質問が多くあった。この蕃茄醤油は、トマトをオーブンで焼きミキサーにかけ調味されたもの。この醤油はとろみ調整粉でとろみがつけられており、造りとの絶妙なからみ具合が図られている。テーマ食材の「白紗海老」では、一般的に白紗海老といえば煮焚き料理が主流だけれど、今回は焼くという調理法から旨みを引き出す発想がなされていることへ高い評価がなされた。もうひとつのテーマ食材である「玉造黒門越瓜」の料理では、料理の仕上がりの美しさに対しての声が多くあった。北野運営委員からは「白瓜の涼しげなラインが、女性の和服夏姿を連想させる」という声もあった。シビ節が利いた素麺汁のまったりとした味わい、種も食材に生かす知恵も素晴らしいの意見も少なくなかった。 |