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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第34回〉
2013年 10月

第34回の大阪料理会。深まる秋に両会員は、収獲そして紅葉を前菜のテーマに設定。大阪北部に位置する豊中市の内谷氏は、能勢の山里を彷彿させる三種の前菜を。また辻調理師専門学校の小川氏は冬を感じさせる山海の幸を取り入れた前菜を披露した。テーマ食材ではひとつの食材の各部位の特質を生かした料理法が内谷氏より紹介された。また、本会では、事務局より次年度における3店が1チームとなる新運営方法が説明され、出席会員による組み合わせ抽選が行われた。


内谷 和人さん 内谷 和人さん
よし乃
小川 健さん 小川 健さん
辻調理師専門学校
お店HP
内谷 和人さんの献立 小川 健さんの献立 撮影/藤澤 了 文/笹井良隆

◆11月の前菜テーマ/満作の秋

10月の前菜テーマ/泉州だんじり祭

【料理名】満作の秋

・餅銀杏と粟麩の白和え
・落花生と黒豆の豊穣漬け
・助子生姜煮


豊中市より北部は山深い里。秋の収穫には様々な木の実や豆類が食卓を賑わせる。今回の内谷氏の前菜料理は、まさにそうした山里の収獲の喜びを表現したもの。餅銀杏と粟麩を使い、白和えの地には栗の蜜煮や原木椎茸が甘味として加えられているのも面白い。落花生と黒豆の豊穣漬けは、ごくシンプルに出汁と塩そして淡口のみで煮て漬け込むことで各々の味わいを充分に引き出している。11月に市場に出回る生助子を使った生姜煮は、食する人に、はや正月を感じさせる一品といえるだろう。わずか三種の前菜だが、食べ手に次の料理への大きな期待を抱かせるものとなっているといえよう。


◆10月のテーマ食材/魚介篇「太刀魚」

【料理名】
太刀魚山芋鮓 太刀魚箱鮨

太刀魚という魚は細長く、身肉の付き方が頭部側と尾部側の部分とでは大きく異なっている。こうした食材を「鮓」という観点から2つに使い分けてはどうか、という内谷氏からの提案。先ず太刀魚の山芋鮨では、太刀魚を三枚に卸し、身の厚い部分を生鮓に。山の芋は蒸して裏漉して梅酢などで調味。太刀魚で山芋鮨を棒状に巻き込んでいる。一方、太刀魚の箱鮨では、太刀魚の身の薄い部分を焚いている。すし飯を押し箱に詰め、干し椎茸の艶煮と共に押しにかける。太刀魚を鮓に利用するということだけでも驚きだが、これを部位により使い分けるというのは、山里に近いお店ならではの発想といえよう。


◆10月のテーマ食材/蔬菜篇「海老芋」

【料理名】海老芋饅頭 海老芋菊菜餡

海老に似た形状でその名が付いた海老芋は、いわゆる下部となる尾の部分には繊維質が多く含まれる。内谷氏は海老芋を上下2つに分け、下部を「海老芋饅頭」としている。海老芋を直炊きし、裏漉したものに溶き葛を加えて煉り、さらにこれにジャコエビを詰め込んで饅頭としている。また、海老芋の頭の部分は片栗粉をまぶし空揚げにしている。煮汁に海老芋と相性の良い菊菜の裏漉しを混ぜ合わせて銀餡を作り、揚げた芋の下に敷いている。今回、使用した海老芋は内谷氏が生まれ育った四国の吉野産。大阪の海老芋とはひと味違った海老芋の良さに驚く会員は少なくなかった。




【総評】

前菜料理の「餅銀餡と粟麩の白和え」に多くの賛辞があった。「栗と椎茸の相性が素晴らしい、味に深みが出る」という意見や「これは黄金和え」という名にした方がよいという意見もあった。落花生と黒豆を使った前菜については、あえて豆らしい堅さを残したかったという内谷氏の考えに対して、豆の適切な堅さとは何かとの議論もあった。テーマ食材では、海老芋という食材についての様々な意見が出された。中でも産地と生産地の異なった多くの海老芋を食べ比べたが、どれひとつとして同じような海老芋がなかった。海老芋はまさに食材を知ることの重要性を認識させられるものとの意見が会員から発表された。食材を単一なものと見るのではなく、その特質を把握することで、あえてこれをばらばらにして各々を生かして使い切る。これこそが大阪料理である。そうした観点から、今回の内谷氏の料理と狙いは素晴らしい、という声があったことを付け加えておきたい。

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