amakaratecho.jp   www全体
大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第35回〉
2013年 11月

第35回の大阪料理会。開会の冒頭に事務局から、会の相談役である上野修三氏が「現代の名工」を受賞された旨の報告があった。続いて畑会長から、「これを機に大阪料理会をさらに発展させ、今後も本会の中から名工が誕生することを期待する」とのコメントがなされた。さて、今回の前菜のテーマは、浪速の師走を感じさせる料理が並んだ。ひとつは雪見の頃、もうひとつは浪速の冬至。いずれも現代的な嗜好を取り入れた提案料理となった。またテーマ食材ではセミと呼ばれる海老芋や土入蟹など当会初お目見えとなる食材が披露された。


柚野 克幸さん 柚野 克幸さん
西心斎橋 ゆうの
前田 武徳さん 前田 武徳さん
菜ばな
お店HP
柚野 克幸さんの献立 前田 武徳さんの献立 撮影/藤澤 了 文/笹井良隆

◆12月の前菜テーマ/雪見乃頃

12月の前菜テーマ/雪見乃頃

【料理名】雪見乃頃

・椿鮨
・青竹串
・蓮根洋風松風
・鯖の生鮓炙り 蕪餡
・ちしゃとう 味噌漬


師走時期は大阪に様々な根菜が出回る。柚野氏はこれらを使い「雪見の頃」を巧みに演出。先ずは蕪。スライスした蕪を、立て塩して甘酢へ。サーモンの手鞠寿司の上から蕪を包み、これを椿の蕾に見立て、煎り卵の花芯を見せることで動きを出している。次は串仕立てには正月を予感させる艶煮した車海老、数の子粕漬、そして餅銀杏。三種目には蓮根を使いこれを洋風にベシャメルソースを用いた松風としている。四種目は、炙り鯖生鮓に蕪ピューレを調味した餡。最後は、冬野菜として人気のちしゃとうを味噌漬にしている。


◆11月のテーマ食材/魚介篇「土入蟹」

【料理名】
土入蟹乃縮緬甘藍巻

土入蟹という珍しい食材を使った一品。土入蟹は和歌山の土入川に多く生息しているところからその名が付いたとされる。大阪で馴染み深いガザミの一種で、別名ノコギリガザミとも呼ばれている。柚野氏はこれを蒸して捌き、身に飯米のピューレなどをつなぎとし、薯蕷を使いキャベツで巻いている。蟹殻からは出汁をとり吸い物としている。天盛りにはすじ子の沖漬け、紫菊菜、大黒しめじ、鰹の酒盗で作った味噌がのせられている。


◆11月のテーマ食材/蔬菜篇「柚子」

【料理名】柚子釜蒸し 焼白子入り海老芋摺り流し

海老芋の収獲には、小芋の他にも孫芋さらには小さなひ孫ともいえる小芋が収穫される。今回、柚野氏はこのセミとも呼ばれるひ孫の海老芋を使った料理法を紹介。小さな海老芋を蒸して皮をのぞき出汁で焚いて裏漉す。これを白味噌ベースの出汁にすり流しとしている。鱈の白子に焼き目をつけたものを柚子釜に入れ、先ほどの海老芋の地を流し入れて蒸すことで柚子香も付き、いわば海老芋の孫芋と柚子が一体となる料理。海老芋といえば、蒸す焼くといった料理法があまりに一般的だが、今回のように孫芋などの特質を見極め、あえて摺り流しとしているところにこの料理の狙いがある。また今回、海老芋収穫時に多く採れるのだが市場価値が低いこうした食材に、あえてスポットをあてた柚野氏の試みは素晴らしいといえよう。




【総評】

前菜料理の評としては、椿寿司の塩気が少し強い点、酢の味(濃淡)加減について様々な意見が出された。蓮根を使った洋風の松風は試みが面白いという意見がある一方、ベシャメルの牛乳臭が気になるという指摘もあった。また本前菜について上野相談役から、ひとつの前菜の中にサーモン、鯖が生魚として二種使われている点に対する指摘(注意)があった。さてテーマ食材だが、やはり海老芋のセミ(ひ孫)や土入蟹といった珍しい食材への質問が多く出た。特に海老芋を摺り流しとした発想に対しての賛辞が多く、是非一度やってみたいという声もあった。ただ柚子釜から少し苦みが出てしまったことが残念とする意見、反対にこうした苦みもまた味わいとしてはどうか、という主張もあり暫し論議となった。次の土入蟹では「味が濃いので驚いた」という声が多くあがった。料理としては、概ね良かったとしながらも、いろんな味が混ざりすぎている、もっとシンプルにという意見、さらにはせっかくの蟹味噌をもっと生かして欲しかったという意見もあった。

  シーン1 シーン2


祝・上野修三相談役「現代の名工」を受賞