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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第36回〉
2013年 12月

大阪料理会、3期の締め括りとなる第36回定例会。初春を感じさせる前菜テーマが並んだ。ひとつは、オーソドックな料理の中に今様なアプローチを加えた「松竹梅」。そしてもうひとつが、料理屋の初仕事ともいえる「初釜」。供する型を官休庵に倣いながらも、和洋の料理技法が巧みに駆使されている。また今回は、冬らしい浪速伝統野菜「天王寺蕪」と「難波葱」が使われているところも見所、味わい所となったようだ。


杉本 亨さん 杉本 亨さん
浪速割烹「和亨」
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畑島 亮さん 畑島 亮さん
串揚げ・大阪料理 Cuisine d'Osaka Ryo
お店HP
杉本 亨さんの献立 畑島 亮さんの献立 撮影/藤澤 了 文/笹井良隆

◆1月の前菜テーマ/松竹梅

1月の前菜テーマ/雪見乃頃

【料理名】松竹梅

・数の子粕漬
・黒豆
・松風
・梅人参
・ちしゃ軸味噌漬


松竹梅をテーマにした五種盛。数の子粕漬は塩抜きし、煮切り酒で洗ったものを白味噌・田舎味噌、そして酒粕を合わせた地に4日間漬けている。定番ともいえる黒豆は、戻した黒豆を薄蜜から濃蜜へと蜜替えしながら炊きあげてられている。松風は、あえて鶏ミンチが使用されているところが面白い。これに魚の擂り身、卵白・卵黄等と溶き葛。これを松型にとり卵黄を塗り芥子のみ実と青海苔で化粧している。竹に見立てたちしゃ軸は塩茹でした後、白味噌に漬けている。


◆12月のテーマ食材/魚介篇「寒鯛」

【料理名】鯛蕪

鯛と蕪のシンプルな料理だが、食材を選ぶ眼力など板前割烹としての力量が試される料理のひとつといえよう。外皮を剥いた天王寺蕪。寒鯛は三枚に卸し、身と粗・中骨を焼いておく。鰹出汁の中に剥いた蕪の皮、鯛の身と粗を入れ淡口醤油で調味しながら炊く。また鰹出汁に昆布を入れ、先ほどの焼いた中骨、蕪を入れて淡口・味醂・塩で炊く。鯛と蕪を盛り合わせ、湯がいた蕪軸を添え、刻み柚子が盛られている。


◆12月のテーマ食材/蔬菜篇「難波葱」

【料理名】難波葱の茶碗蒸し

大阪の難波葱をルーツにした葱は各地にあり、京都の九条葱、関東の千住葱もそうだとされている。今回はそんな昔ながらの難波葱が持つ特徴を引き出した料理として茶碗蒸しが試みられた。難波葱の頭を芳ばしく焼き上げ、これを刻んで鰹出汁を入れて煮つぶしている。これをさらにミキサーにかけピューレに。芯(根)の部分はとろとろになるまで焚いている。また才巻海老の頭と白味噌をミキサーにかけたものを裏漉し茶碗蒸しの合わせ地に。難波葱のピューレと才巻海老の味噌を合わせ、卵地を加減し流し函へ。今回は餡として鰹出汁、淡口、味醂、酢で合わせたものを茶碗蒸しに張っている。




【総評】

極めてオーソドックスな料理が並んだ前菜料理。それだけに様々な作り方やこだわりが意見として出された。中でも黒豆については、ぶどう豆の謂われ等で意見が分かれた。大阪的なぶどう豆の捉え方として、「葡萄酒を使って煮る」というところからぶどう豆の名がついたという説が杉本氏から紹介された。一般的には葡萄色とか、形状を由来としているが、巷の説と料理界の説が異なることは、よくあるところ。ひとつのヒントになるのではないだろうか。
支持が高かった料理としては、鶏ミンチを使った松風。これは一度試してみたいという声が多く聞かれた。最後に北野運営委員からは、「オーソドックスな料理は誰もがする料理だけに、料理そのものに料理人として年輪が自ずと出る。極めれば奥が深いもの」という感想が強く皆の印象として残った。
テーマ食材としては難波葱の旨さに驚いた、餡の酢が葱の甘味を増幅させているという声があったが、それだけに海老は不要だったのではないかとの指摘もあった。

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