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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第39回〉
2014年 3月

一陽来復。梅はもとより、早や桜の開花が報じられる3月の大阪料理会。今月の前菜料理は、まさにその桜がテーマ。食材のテーマも春らしい白魚や、これから旬を迎える大阪産のアワビなどが並んだ。日本料理にとって春が意味するものは何か。また大阪料理でどのように春を表現するのか。あべの辻調理師専門学校の重松主任研究員による「花見と料理」についての発表も料理人にとっては非常に興味深いものであったといえよう。


松尾 英明さん 松尾 英明さん
千里 柏屋
お店HP
板倉 誠司 板倉 誠司さん
旬菜 喜いち
お店HP
坂本 晋さん 坂本 晋さん
北新地 味菜
お店HP
松尾 英明さんの前菜 板倉 誠司さんの献立 坂本 晋さんの献立

◆4月の前菜テーマ/観桜乃頃

4月の前菜テーマ/観桜乃頃

【料理名】観桜乃頃

・ノノレソレ酒煮 桜花 三つ葉 鶉卵子朧月見立
・筍 赤貝 一寸豆 腐乳和え
・針魚干子射込み火取 菜の花蕗の薹を添えて


観桜乃頃、日本人は季節に暮らしに食生活に何を感じていたのだろう。松尾氏が取り組んだ今回の前菜には、そうした「桜と日本の心」が表現されている。今回の前菜料理について松尾氏は、「春になると、日本の里には山からサ(稲)の神が降りてきて、桜をクラ(座)とする、その姿こそが桜花ではないかと考えた。そんな日本人の感性を大切にしたい。また料理に敷く紅白の奉書紙も、少し透かせば紅奉書の紅色が桜色として浮かび上がる。ここにも日本人の心があると思います」。桜を何処でどう観るか。その心情を表現したのが今回の前菜料理と見るなら、まずは山の朧月と共に観る桜。『鶉玉子朧月見立て』では、鶉玉子を温泉玉子とし黄味を取りだし、大阪的におぼろ昆布で挟んでいる。千切りにした塩漬け桜葉を漬け蒸した掛け出汁の香りは春を思わせる。次に里での観桜は、『筍、赤貝、一寸豆腐乳和え』。下茹でした筍を色よく淡口等で焚き、赤貝は上身にし肝は塩茹で。これらを腐乳という異国の調味料を和風に仕上げた衣で和えている。最後が海辺の観桜。『針魚干子射込火取』。三枚に卸した針魚を酒塩に漬け、短冊の干子を包んで火取りに。蕗の薹のほろ苦い味わいと菜の花が春の鮮やかな彩りとなっている。




【総評】

桜そして観桜の頃をどのように前菜の中に昇華させていくのか。単なる技術だけではない、料理としての奥深さと面白さが前菜にあることを知る良い機会になった、との声が多く出た。具体的な料理内容については、腐乳和えという中国の調味料を日本的な感性で和え衣としたところに驚きと質問が相次いだ。そのままでは使いづらいこうした調味料も、少し手を加えるだけで新しい日本料理の調味料となることに全員が試食して納得した。また蕗の薹のペーストについては、前回の蕗の薹のテーマにおいて松尾氏が行った料理法の発展系として披露された。自らが大阪料理会の場で研究したことを、さらに発展させて新しい味を創造していく。また他の会員が発表した調理法にさらに工夫改良を加えて発表する。40回を重ねて次第にそうした成果が生まれつつあると参加者が感想を述べたことが印象的であった。

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撮影/藤澤 了 文/笹井良隆