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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第40回〉
2014年 4月

第四十回目となる大阪料理会。今回担当いただいた3名は、藤井寺市、高槻市そして大阪市とそれぞれにエリアが異なることから、前菜やテーマ食材の選定に面白い地域色を見ることができた。中でも前菜においては、これまでにない大阪の歴史から発案されたものが提案されるなど話題を集めた。


菰田 昌寛さん 菰田 昌寛さん
料亭 梅廼家
お店HP
ぐるなび
島村 雅晴 島村 雅晴さん
雲鶴
お店HP
ぐるなび
荒木 宏之さん 荒木 宏之さん
araki8823
お店HP
ぐるなび
菰田 昌寛さんの前菜 島村 雅晴さんの献立 荒木 宏之さんの献立

◆5月の前菜テーマ/大坂夏ノ陣

4月の前菜テーマ/観桜乃頃

【料理名】大坂夏ノ陣

(大阪の陣四百年祭に因んで)

・鯉鎧焼き
・蛸麹漬け六文銭餅
・一寸豆勝栗見立て


平成26年は「大坂冬の陣」からちょうど四百年。翌年に起こった「夏の陣」にかけて大阪ではこの節目に大阪城天守閣を基点に、「大坂の陣四百年祭」が開催される。菰田氏が本催しを前菜テーマに取り上げた理由は、担当となった月が端午の節であったこと、さらに菰田氏の料亭・梅廼家がある藤井寺市道明寺が、豊臣家の江戸幕府に対する最後の抵抗を鎮圧するために行われた地域でもあったからである。さて、大阪の陣四百年祭をイメージした前菜三種。ひとつは、男子の節句らしい鯉を使った鎧焼き。羽曳野市で養殖される鯉を、大阪料理会会員の島村氏発案による野崎焼からヒントを得て、太白胡麻油で100℃度程度の温度で6時間火を通している。鯉といえば煮物といった概念を覆す試みだろう。
次に、大阪ノ陣のヒーロー真田幸村に着目。その旗印が冥銭を表す六文銭。菰田氏はこの六文銭を夏に旬を迎える和泉蛸で表現している。餅には麹に道明寺粉を合わせて使っているところに地域性を見ることができる。前菜三番目が、一寸豆を使った勝栗。戦の前の出陣式で必ず供された「三肴」。それが、「打ち鮑」「勝栗」「昆布」。ここでは5月に旬を迎える河内一寸蚕豆が使って「勝栗」を表現。この勝栗には、鯉を捌いた時の鯉子を湯がき調味したものを合わしている。始末の大阪料理らしい発想といえよう。




【総評】

前菜料理としては三種とシンプルでかつ小ぶりな表現となっているが、特徴ある味づくりが面白いという意見が多数聞かれた。鯉の調理法への質問では、油で6時間も火が通されているが鯉の味わいは失われていないことへの賛辞があった。蛸麹漬けでは麹床の配合についての質問があった。また一寸豆を使った勝栗では、鯉の子と共にケシの実も使われたが、ケシの実の量が多すぎたのではないか、との指摘があった。前菜料理のテーマとしては、これまでにないもの。会員全員が一体どのように料理として表現するのだろうかという関心が高かったが、見事にその期待に応えるものとなったといえよう。前菜はややもすれば季節感だけに流される傾向にあるが、決してそれだけではない。そこには歳事や地域の歴史をも食べ手と共有できる可能性があることを示唆してくれたといえよう。

  シーン1 シーン2


撮影/藤澤 了 文/笹井良隆