今月の献立 〈第47回〉 2014年 11月 |
秋も深まりを感じる11月の大阪料理会。前菜では今年が十九年に一度にあたると云われる「朔旦冬至」がテーマに選ばれた。そしてこの月の大阪料理会で特筆すべきは、三名の会員によるコラボレーション料理だろう。天王寺蕪という食材に対して三名のアイデアが盛り込まれた大阪料理とはいかなるものか。大阪料理会初の試みに、会場内は開始前から熱気に包まれた。 |
山崎 浩史さん 旬菜「山崎」 |
上野 修さん 浪花割烹「喜川」 |
岩渕 貴生さん 太閤園「淀川亭」 |
山崎 浩史さんの前菜 | 上野 修さんの献立 | 岩渕 貴生さんの献立 |
【総評】 店内に空間演出があるように、前菜という一皿の中にも空間演出がある。今回の前菜は冬至という演出だけでなく、食べ手にとっては冬至の話題の種を提供するものともなっているのでは、という賛辞が多くあった。ただ会員の中からは、空間と話題の演出だけでなく、五種それぞれにもっと食感の違いがあればさらによかったという意見も出された。運営委員からは、「前菜で難しいのは『野菜』。いかに野菜を前菜の中で出していくか。そこに料理人の技量が試される。野菜を主としたこの前菜料理はその意味で大変勉強になったのではないか」との評も。最後に畑会長からは、「ん、をつかった昔ながらの趣向は面白い。だがさらに一歩進めて、これら料理を一盛りにするのではなく銘々皿で食べる人が掴んで食べる。つまり『運をつかむ』といったことに変えていってもよいのでは」という興味深い指南も聞かれた。 |
【総評】 この一椀で天王寺蕪を堪能できる。まさにそういった記憶に残るような料理であった、との評が圧倒的であった。また天王寺蕪の茎葉のピューレなどを味そして色目で効果的に使っているのも素晴らしい、といった意見。同様に、霙汁の中に映える蕪の緑が印象的だったなどの声もあった。畑会長は今回のコラボレーションについて「ゼロから料理を発想し互いに意見をぶつけ合うのもひとつの方法かもしれないが、既存の料理を三者が違った角度から意見を出し合い、さらに良く現代風に変えて新しい料理を創っていくのも良いのではないか。今回はまさにそうした試みの好例になったと思う」とコメントしたことが印象的であった。 |
撮影/藤澤 了 文/笹井良隆