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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第47回〉
2014年 11月

秋も深まりを感じる11月の大阪料理会。前菜では今年が十九年に一度にあたると云われる「朔旦冬至」がテーマに選ばれた。そしてこの月の大阪料理会で特筆すべきは、三名の会員によるコラボレーション料理だろう。天王寺蕪という食材に対して三名のアイデアが盛り込まれた大阪料理とはいかなるものか。大阪料理会初の試みに、会場内は開始前から熱気に包まれた。


山崎 浩史さん 山崎 浩史さん
旬菜「山崎」
お店HP
ぐるなび
上野 修さん 上野 修さん
浪花割烹「喜川」

ぐるなび
岩渕 貴生さん 岩渕 貴生さん
太閤園「淀川亭」
お店HP
ぐるなび
山崎 浩史さんの前菜 上野 修さんの献立 岩渕 貴生さんの献立

◆11月の前菜テーマ/朔旦冬至

前菜「朔旦冬至」<br />
・蒸南瓜厚焼仕立<br />
  ・銀杏かき餅<br />
  ・蓮根雲丹焼き<br />
  ・饂飩博多寄せ<br />
  ・金柑干し柿 爽和凝乳和え

【料理名】朔旦冬至

・蒸南瓜厚焼仕立
・銀杏かき餅
・蓮根雲丹焼き
・饂飩博多寄せ
・金柑干し柿 爽和凝乳和え


本格的な冬が始まる冬至。今年は陰暦11月の朔日(最初の日)にあたるという十九年に一度の朔旦冬至。日本では古来より冬至には、「ん」のつく食材を食べることを慣習としてきた。今回の前菜はこれに因んだものといえよう。
先ずは南瓜(なんきん)。蒸した南瓜を裏濾し、これに擂り身や卵黄などを合わせ栗甘露煮を刻み入れ、厚焼風としている。2つ目は、銀杏(ぎんなん)。当たり鉢であたった銀杏を餅状にし、唐墨を入れて揚げている。3つ目が蓮根(れんこん)。白煮にした蓮根に酒盗人参を詰め雲丹を乗せ焼いている。4つ目の饂飩(うんどん)は、蟹身や椎茸などを使い博多寄せに。5つ目の金柑(きんかん)は干し柿と金柑をサワークリーム入の白和え衣で和えている。いずれも前菜らしくシンプルで、味そして彩りで食客を喜ばせるものといえよう。


【総評】

店内に空間演出があるように、前菜という一皿の中にも空間演出がある。今回の前菜は冬至という演出だけでなく、食べ手にとっては冬至の話題の種を提供するものともなっているのでは、という賛辞が多くあった。ただ会員の中からは、空間と話題の演出だけでなく、五種それぞれにもっと食感の違いがあればさらによかったという意見も出された。運営委員からは、「前菜で難しいのは『野菜』。いかに野菜を前菜の中で出していくか。そこに料理人の技量が試される。野菜を主としたこの前菜料理はその意味で大変勉強になったのではないか」との評も。最後に畑会長からは、「ん、をつかった昔ながらの趣向は面白い。だがさらに一歩進めて、これら料理を一盛りにするのではなく銘々皿で食べる人が掴んで食べる。つまり『運をつかむ』といったことに変えていってもよいのでは」という興味深い指南も聞かれた。

  シーン1



◆上野修さん、山崎浩史さん、岩渕貴生さんのコラボレーション料理
テーマ「天王寺蕪」

天王寺蕪の割り出し露汁<br />
葛豆腐 焼蕪 葉巻 人参 柚子

【料理名】天王寺蕪の紅葉鯛霙汁

葛豆腐 焼蕪 人参 柚子


上方で古くから伝わる料理に鯛蕪がある。今回はその鯛蕪からの発想をベースに天王寺蕪を余すところなく使っての一品。天王寺蕪の皮をオーブンで脱水。紅葉鯛の中骨に塩を馴染ませこれを焼く。真昆布出汁にこれらを入れて濾し、卵白や酢橘酢を入れて鯛蕪出汁をとる。茎葉の部分はピュレと軸の葉巻とする。蕪と葉を使い葛豆腐、焼き蕪、霙汁用のおろしに。椀種に葛豆腐、焼き蕪、葉巻。先ほどの鯛蕪出汁をはり人参・柚子が添えられている。今回のコラボレーションでは、昔からの鯛蕪椀をベースに、それぞれが意見を出し合うことでこの料理が考案された。


【総評】

この一椀で天王寺蕪を堪能できる。まさにそういった記憶に残るような料理であった、との評が圧倒的であった。また天王寺蕪の茎葉のピューレなどを味そして色目で効果的に使っているのも素晴らしい、といった意見。同様に、霙汁の中に映える蕪の緑が印象的だったなどの声もあった。畑会長は今回のコラボレーションについて「ゼロから料理を発想し互いに意見をぶつけ合うのもひとつの方法かもしれないが、既存の料理を三者が違った角度から意見を出し合い、さらに良く現代風に変えて新しい料理を創っていくのも良いのではないか。今回はまさにそうした試みの好例になったと思う」とコメントしたことが印象的であった。

  シーン2


撮影/藤澤 了 文/笹井良隆