amakaratecho.jp   www全体
大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第49回〉
2015年 1月

新春の大阪料理会は、畑会長そして上野相談役からの新年の挨拶で始まった。回を重ねるごとに顕著になる新しい調理法や食材への取り組み。一方、昔ながらの日本料理人の仕事への見直しも同時に行っていく。今回はまさにそのような大阪料理会の姿を象徴する内容であったといえよう。


濱本良司さん 濱本良司さん
大阪あべの辻調理師学校
お店HP
柚野克幸さん 柚野克幸さん
西心斎橋「ゆうの」
ぐるなび
坂本 晋さん 坂本 晋さん
北新地割烹「味菜」
お店HP
ぐるなび
濱本良司さんの前菜 柚野克幸さんの献立 坂本 晋さんの献立

◆2月の前菜テーマ/立春乃頃 東風凍解(はるかぜ こおりとく)

前菜「立春乃頃 東風凍解」<br />
・鰆 蕗の薹焼 残雪見立て福笹・萵苣薹<br />
  ・鰯と麦の多留多留(タルタル)風<br />
  ・信田巻き<br />
  ・白魚の桜蒸し<br />
  ・若牛蒡の変わり揚げ

【料理名】立春乃頃 東風凍解

・鰆 蕗の薹焼 残雪見立て福笹・萵苣薹
・鰯と麦の多留多留(タルタル)風
・信田巻き
・白魚の桜蒸し
・若牛蒡の変わり揚げ


東風凍解は七十二候の中のひとつ。立春でも初候にあたる季節がイメージされている。
濱本氏はこの頃の季節感を「兆し・行事・祭り・旬魚・旬菜」の5つの観点から捉え、それぞれのテーマに相応しい料理をひとつにまとめることで立春の頃の前菜としている。食べ手にも意図が伝わりやすく、とても面白い構成だといえよう。
さて料理だが、春一番の兆しを低温調理した「鰆」と「蕗の薹油」そして残雪見立てのムースを使って表現している。鰆は72℃の湯に入れ芯温62℃になるまで火が通されている。生食に近い柔らかな食感に仕上がっている。行事は麦踏みで表現。ここでは柚子の割り酢に浸けた鰯と、酒八方地で煮た押し麦を卵の素でタルタル風に仕上げている。祭りは初午。商売繁盛を願い稲荷大社へ詣でる初午で食される薄揚げを使っての信田巻。豆腐生地に椎茸・人参など精進具材が使われている。旬魚は白魚。道明寺粉に百合根を射込んで桜葉で巻き蒸している。旬菜は若牛蒡。若牛蒡に海老を合わせ相性のよい油で揚げている。




【総評】

彩りの美しさ、テーマ性の楽しさなどに賛辞が多くあった。料理への質問で集中したのが鰆の低温調理。しっとりした食感が驚きだったという声と共に、魚介の低温調理の必要性が論議された。肉ならば理解できる低温調理の長所も、魚介では逆に短所になりはしないか。仕出しや弁当などの仕事が多い日本料理では、作り手の意図に反して、焼けていない魚という風に捉えられてしまうのでは、という意見もあった。また「焼く」という昔ながらの日本料理法においては、焼きものならば「しっかりと焼く」ことが美とされてきたが、低温調理のような生調理と焼き調理との間をどう考えていくのかということへの提案なども出された。調理器具の進歩と共に様々な調理法が生み出されていくが、それぞれの調理法を日本料理の中でどう位置づけ、大阪料理としてどのように確立させていくのか。会員各々に感じるところ大であったのではないだろうか。

  シーン1 シーン2


撮影/藤澤 了  文/笹井良隆