春から初夏へ。木々の色合いだけでなく、食材にも濃い緑が多くみられるようになった今回。前菜はこれまでとは少し趣向を変えて皐月の野菜尽くしが披露された。またテーマ食材では、和製のチョウザメにキャビアといった高級食材が、和のテイストからどのように料理すべきかなどが会員に投げかけられた。常にも増して内容の濃い大阪料理会となった。

◆５月の前菜テーマ／皐月野菜尽し五種盛

【料理名】皐月野菜尽し五種盛

・甘藍苺味噌
・白阿蘭陀独活青海苔固め
・皐月人参焚き
・泉州玉葱巻繊（けんちん）焼
・甘酢茗荷金団

季節感を料理で表現する前菜。それとは少し趣向を変え、季節を先取った野菜五種をとりあげ、食べ手に野菜という各食材から季節感を感じ取ってもらいたい。そのような思いで試みられたのが今回の野菜尽し前菜だといえよう。春キャベツは胡麻油で生姜と共に炒めて調味。ソース感覚で、苺ペーストに玉味噌などを合わせた苺味噌が使われているのが何とも面白い。白アスパラは青海苔使い巻き揚げているが、炭酸水を使った揚げ衣のサクサク感が何とも心地よい。季節の人参は、八方地でピューレにした後、これを人参出汁で焚いている。泉州玉葱のけんちん焼きでは、湯がいて水きりした木綿豆腐に、刻んだ凍り蒟蒻（こんにゃく）などが使われユニークな食感を生み出している。玉葱料理では、蒸した「くし型玉葱」に具材を詰め黄味焼きとしている。甘酢茗荷では檸檬汁を入れた金団（きんとん）衣二種の彩が何とも爽やかな季節感を感じさせてくれている。

【総評】

野菜尽しの前菜という発想の面白さに賛辞が多くあがった。運営委員のひとりからは「料理から伝わってくる、初夏らしい濃い彩り。そうか春は終わったのだなという気持ちを食べ手に起こさせる前菜ではないか」といった評が聞かれた。参加した会員数名からは、食べやすく身体にも優しい前菜だったのでは、という声もあった。味わいへの評としては、苺ペーストを使った苺味噌など、和洋の妙を随所に感じさせて前菜で、そこもまたよかったのでは、という声もあった。五種の野菜が持つそれぞれの特徴を非常によく引き出していた前菜料理。今回の前菜へのアプローチは、今後の前菜料理の方向性に大きな影響を与えそうだといえよう。