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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第54回〉
2015年 6月

6月の大阪料理会は少しこれまでとは違い、担当会員がひとつのチームとして全テーマに挑むという形となった。前菜の五品では、全員で前菜テーマを協議した後に、五品それぞれを3名で分担するという手法での発表となった。また、魚介・野菜の各テーマもひとまず4テーマを全員で選び、各々がこれを担当する形となった。


※今回は以下の3名がアイデアを出し合い、合作によるプレゼンテーションが行われた。
上野さん、広里さん、中村さん 上野 修さん「浪花割烹 喜川」
ぐるなび

中村 正明さん「和洋遊膳なかむら」
ぐるなび

広里 貴子さん「貴重」
お店HP


◆7月の前菜テーマ/夏ノごあいさつ

前菜「夏ノごあいさつ」<br />
・小蛸柔らか煮<br />
  ・白瓜柴漬け<br />
  ・小羽鰯の淡口煮<br />
  ・甘辛唐辛子大村屋製胡麻淡羹<br />
  ・江井あまから焼

盛夏五種盛

・小蛸柔らか煮
・白瓜柴漬け
・小羽鰯の淡口煮
・甘辛唐辛子大村屋製胡麻淡羹
・江井あまから焼

「夏ノごあいさつ」とはいかなる前菜か。盛夏五種盛ではあるのだけれど、それぞれの料理の中に、当会へ協賛いただいている淡口醤油のヒガシマル・胡麻の大村屋、あまから手帖のクリエテ関西各企業への感謝を込めるという趣向になっている。さて、大阪らしい夏の食材といえば蛸。この小蛸柔らか煮では、蛸を煮るという調理法に対する試行錯誤の取り組みが発表された。ここでは昆布出汁、酒、味醂、淡口醤油で調味したもので65℃の温度帯を保ったまま15分の火入れがなされている。白瓜柴漬では、白瓜の中に大葉に巻いた水茄子を詰めるというユニークな発想が見られる。小羽鰯の淡口煮では、淡口醤油を使った蝋焼き。赤唐辛子の大村屋製胡麻淡羹では、赤ピーマンと煉り胡麻との相性が試されている。エイのあまから煮では、エイのヒレを味醂、酒、淡口で調味したものに漬け、一味を効かせ、脱水シートに挟んだものを焼いた一品となっている。いずれも盛夏の前菜に相応しいものといえよう。


【総評】

夏の前菜なら、現代ではジュレ系のものなどが人気だが、今回はそうしたものではなく少し昔風な大阪料理が試されている点に高い評価がなされた。北野運営委員からは「それぞれの料理がとても力強く、京料理の名匠として知られた西 音松氏の料理が思いだされた」との評も聞かれた。さて各々の料理については、蛸の調理法についての質問が多くあった。担当した中村氏からは「皮をずるけさせないで、如何に柔らかく煮るか。ただしこの調理法では大蛸は難しい。蛸料理は奥が深い」とのコメントが印象的だった。白瓜柴漬けでは、「通常は瓜には動物性をよく合わせるが、水茄子を使っているのは面白い」など視点を変えた発想への賛辞があった。エイのあまから焼きでは、エイという食材に対する様々なコメントが寄せられ関心の高さが伺えた。会員からは「エイは中骨以外ほとんどすべて食することができる素晴らしい食材。料理屋がもっと積極的に使うべき」との感想もなされていた。

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◆6月のテーマ食材/魚介篇「鱧」 上野 修さんの献立

鱧の枝豆揚げ 冷製蕃茄味噌

鱧で真薯を作り、これに枝豆の他、百合根や木耳と共に合わせ湯葉で巻いて揚げている。
そしてこの変わりだねの鱧真薯は、冷製の蕃茄味噌で食する趣向となっている。トマトは甘さが強い今風のものではなく、酸味の効いた昔ながらのトマトをあえて使っているところも面白い。これに白味噌・田舎味噌・生姜等を合わせ、最後に檸檬で調味がなされている。


◆6月のテーマ食材/魚介篇「栄螺」 上野 修さんの献立

栄螺の冷やし紫蘇素麺

栄螺の苦味ある肝。これをひとつの味のポイントに仕上げることはできないか。おそらくそんな発想から発案された料理ではないだろうか。熱を入れて殻から出した栄螺を、出汁、濃口、たまり、砂糖で調味。肝は裏漉しておき、薄切りした栄螺の身と和えている。大葉紫蘇は当たり鉢で摺り、これに酢・淡口・味醂・太白胡麻油を加え、素麺と和える。この素麺の上に、先ほどの栄螺の肝和えを盛りつけ、刻んだカリカリ梅を散らしている。

【総評】

鱧の枝豆揚げは、鱧と枝豆の真薯としての相性の良さへの評価が多くあった。食感として木耳なども組み込まれているが、せっかくのこの真薯に他にどのような食感をプラスさせるべきか、ということへの意見もあった。中にはカリッとさせた鱧の皮なども使ってみてはどうかといった声も聞かれた。冷製蕃茄味噌については「これを参考に是非一度やってみたい」との声が少なくなかった。
栄螺の肝を効かせた紫蘇素麺は、「夏らしい爽やかな素麺料理」「栄螺の肝がアクセントになっている」との賛辞が相次いだ。会員の中からは、紫蘇素麺と別にするのではなく、最初から和えものとして考えてもいいのではないか、といったコメントも寄せられていた。また自家製カリカリ梅についての質問も多くあり、広里氏より、卵の殻を使っての漬け込み方の説明がなされた。

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◆6月のテーマ食材/魚介篇「江井(えい)」 中村 正明さんの献立

江井の丸吸仕立て

昔は大阪で好まれた食材だけれども、今ではほとんど食されなくなったものは意外と多い。
今回のエイもそのひとつといえるだろう。捨てるところがほとんどないエイだが、今回は丸吸い仕立てとしている。エイは肝だけとりおき、他の部分で丸吸いを仕立てている。エイの粗(アラ)は肝と共に煮凝りを焚いて固めている。これを器に合わせて切り出し、その上に浅葱と新生姜をアラレに切った物を入れたメレンゲをのせバーナーで焼き目をつけている。椀には庄内麩、ヤングコーンを添え、丸吸い仕立て出汁が張られている。

【総評】

「エイは、もとは正月の保存料理。醤油と砂糖で炊いたり、幽庵漬けにするなどいろんな風に庶民には食べられてきたようだが丸吸い仕立てというのは、何とも料理屋ならではの発想で良い」との声があがった。会員の中には「エイを初めて味わった」という声もあったが、まだまだ多くの可能性を持った食材という意見も少なくなかった。中村氏は、「エイの部位の中では肝などが有名だが、エイは軟骨が旨い。捨てるところがなく美味で経済的。料理屋には好都合な食材」との説明がなされた。また上野相談役からは「エイは脂もよい。この脂でおからなどを炊いてもいける。今後もこうした忘れ去られようとしている食材にもっと目を向けてほしい」とのコメントを付け加えた。

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◆6月のテーマ食材/蔬菜篇「巴旦杏(すもも)」 広里 貴子さんの献立

巴旦杏と新生姜の道明寺羹

スモモにも様々な種類があるが、代表的なものとしてはソルダムと大石早生。今回は大石早生が使用されている。種を抜いたスモモをシロップになじませ、その煮汁に絞り生姜、ゼラチンを加えスモモを入れ一層としている。次に鍋でシロップに火を入れ、泡立てた卵白にゼラチンを加え、摺りおろし生姜、こぼれ梅、砂糖などを煮詰めジャムにしたものを入れ調味し2層目としている。これらを合わせ冷やし固め、卵黄に豆乳と砂糖そして先ほどのジャムにしたものを加え火にかけ、とろみが出れば急冷し、これを敷ソースとしている。

【総評】

一見、洋風のようだけれども和風。それは外見だけでなく彩りや味わいにもしっかりと阿表われている。多くの会員から様々な賞賛の声があがったが、特に多く聞かれたのが「スモモと新生姜との相性の良さ」と「こぼれ梅が何とも効果的で絶妙」という声。この日、畑会長に代わって評を行った上野相談役からは「こぼれ梅とは、よいところに気がついた。できればもう一皿食べたい」といったコメントがなされた。

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撮影/藤澤 了  文/笹井良隆