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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第57回〉
2015年 9月

開催日早朝の肌寒さ。秋の気配を感じさせる中で行われた大阪料理会。前菜は深まる秋への想いを前菜で表現した「暮秋の料理」からスタート。また今回は担当料理人3名がそれぞれに五種の前菜料理を分担して担当するという形式がとられた。暮秋の前菜ではありながら、それぞれの秋を味わうことができる。面白くこれまでにない興味深い大阪料理会となった。


※今回は以下の3名がアイデアを出し合い、合作によるプレゼンテーションが行われた。
久保 是人さん、杉本 亨さん、山崎 浩史さん 久保 是人さん「おおさか料理 浅井」
ぐるなび

杉本 亨さん「浪速料理 和亨」
ぐるなび

山崎 浩史さん「旬菜 山崎」
お店HPぐるなび


◆久保是人氏、杉本亨氏、山崎浩史氏の前菜料理/10月のテーマ「暮秋」

前菜「暮秋」<br />
・むかご団子 じんだ<br />
  ・鱧と鱧子 葉唐辛子梅醤油掛け<br />
  ・栗のはさみ揚げ<br />
  ・粟麩の白和え<br />
  ・秋刀魚 小袖寿司

暮秋

・むかご団子 じんだ
・鱧と鱧子 葉唐辛子梅醤油掛け
・栗のはさみ揚げ
・粟麩の白和え
・秋刀魚 小袖寿司

【料理について】

一皿の前菜料理であっても、数名の作り手の料理がそこに盛り込まれると、常の前菜料理とは違った雰囲気が漂ってくる。
先ずは久保氏の「むかご団子」。塩蒸しされたむかごに白玉をまとわせている。枝豆でじんだを仕込み、岡あげしたむかご団子にのせている。「栗のはさみ揚げ」は、栗を一晩砂糖漬けにしたものを蒸している。これに海老のすり身を合わせている。杉本氏が担当したのは「鱧と鱧子 葉唐辛子梅醤油掛け」。鱧は焼き霜造りに、鱧子は塩漬けして寝かせた後に塩抜きし、下味をつけて葉唐辛子と和えている。山崎氏は御所麩を使い、胡桃ペーストを加えての「粟麩白和え」。そして「秋刀魚の小袖寿司」は、秋刀魚を棒寿司としたものを龍皮昆布で巻いている。いずれも小品ながら、深まる秋の風情を感じさせるものだと云えよう。


【前菜の総評】

暮秋というテーマにふさわしかった。また前菜らしい前菜であったという評などが多く聞かれた。
むかご料理については、白玉を使って一見はかわいい料理に思えるが、割烹らしい大人の逸品であるとの賛が寄せられた。むかごの皮が少し舌にあたるのではとの声もあったが、それもまた大人の味わいといえよう。
次に鱧と鱧子の料理。大変香ばしくまた美味しいという意見があった。評としては、鱧子にもう少し塩気が欲しかったというもの。タイトルの梅醤油は煎り酒とした方が良いのではといったものもあった。
栗を使った料理では、栗を砂糖漬けにするという料理法に様々な意見が聞かれた。栗は状態の良い期間が短いため、料理ではその時の栗をどう料理するかが求められる。
今回の前菜料理はそうしたことへの、ひとつのヒントとなったのではなかろうか。粟麩の白和えでは、大阪都島で製造されているという御所麩への質問が多くあった。
今回は、様々な事情で既成の胡麻ペーストが使用されたが、運営委員からは、昔ながらの自家製胡麻ペーストの作り方と手作りにこだわることへの大切さに対するアドバイスがなされたのが印象的であった。

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◆9月のテーマ食材/魚介篇「魚是(うおぜ)」

魚是のへしこ(ぶぶ)漬け

店でよく作っているという生鮨(きずし)。残ったものはまかないとして食べていたが、それでも余ることがある。これを何とか保存できないか、という発想から生まれたのが簡易へしこ漬。今回はこれを鯖ではなく魚是を使って試作。
三枚に卸した魚是に、少し強めの塩をあて1時間。これを八方酢に20分程度漬けるのだ。漬床は、煎った米糠を、濃口・酒・味醂で調味したもの。これに約三週間漬け込んだものが魚是のへしこ。これを頃合いの大きさにへいで御飯の上にのせ、ぶぶ茶漬けの要領で昆布茶と煎茶で作った地をかけて供している。

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◆9月のテーマ食材/魚介篇「連子鯛」

連子鯛の葱香蒸

上身にした連子鯛に薄塩し脱水シートに。昆布や白ネギ、生姜などでアラと上身を蒸して、蒸した汁を鍋にとって梅肉などで調味し地を作る。
吸地で温めた豆腐を器に盛って、さらに上身を豆腐の上に。ほぐしたアラ身は卵白で和えるようにして盛り付けてから、先ほどの鍋の地を張っている。最後にあさつきを散らして、揚げネギを天盛りつけ少し中華風に太白油を熱したものを掛けている。
酒蒸し旨さと、温泉玉子のような食感の面白さが楽しめる逸品だといえよう。

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【魚介料理の総評】

魚介をテーマとした二品。
連子鯛の料理では、身の柔らかいこの鯛をいかに調理するかに注目と質問が集まった。それと連子鯛のアラと上身からとった出汁で作られた地の絶妙の調味加減への質問が寄せられた。また連子鯛の旬とはそもそも何時なのか、という質問もなされた。連子鯛の旬は早春から初夏とする説もあれば、秋と春とする説もあるようだ。しかし、いずれにしても1年を通してよく獲れる鯛であることから、真鯛に不足する時の補いとしても使われてきたようだ。
魚是のへしこ漬けは「へしこ」の概念を変えるものという賛辞が多くあった。通常、へしこ漬けを作るには時間を要し、またその味には強烈な酸塩味とクセがつきものだった。しかし、今回の簡易へしこなら、料理におけるへしこの利用範囲はさらに広がりそうだ。会員の中からは、魚是以外の魚ではどうかなどの質問があがった。料理としては昆布茶を使うのではなく、もうひと手間かけた別の工夫があればさらによかったとの意見もあった。


◆9月のテーマ食材/野菜篇「馬鈴薯」

馬鈴薯饅頭べっこう餡掛け

馬鈴薯をおろして使うとどうだろうか。現代では様々なジャガイモが入手できるだけに今後はジャガイモの料理法はもっと研究されていいだろう。
さて、今回はインカのめざめというジャガイモ品種が使用されている。先ずは皮をむき水にさらしたジャガイモをおろし、これに塩を加えながら鍋で煉り上げ茶巾にとっている。そしてこれに片栗粉をうって揚げの饅頭としている。別に焚いた合鴨ロースをのせて、べっこう餡が掛けられている。

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◆9月のテーマ食材/蔬菜篇「石川早生芋」

石川早生豆腐と小蕪の白味噌仕立て

里芋の中でも早生品種ながら上々の旨みをもっている石川早生芋を使った料理。この芋の皮をむき、下味程度に焚いている。これを冷ましてから裏漉しをかけ、吉野葛と芋を焚いた汁で煉り上げ豆腐を作っている。
白味噌仕立ては、鰹出汁に白味噌を溶いてアクを除きながら1時間半程度、沸かさないように注意しながら詰めていく。最後に裏漉し地をなめらかにしている。椀にさきほどの小芋豆腐、小蕪そして十津川産のなめこを盛り付け、白味噌地を張っている。

【蔬菜料理の総評】

馬鈴薯を100%使った料理。精進料理の一品としても充分に使える内容ではないか、との賛辞が多くあった。また合鴨との相性も非常によいこと、べっこう餡には出汁の他にトマト水が使われており、ほのかな酸味が良いといった評もなされた。感想の中には、馬鈴薯と合鴨とのそれぞれにどこか一体感があればさらによかったといった声があったのと、料理名に饅頭とある以上は中に何か詰め物があるべきではないか、といった意見も聞かれた。
石川早生芋の料理では手間をかけた白味噌の香りとなめらかな味わいに対する賛辞が多くあった。しかし、素晴らしい料理だけにさらに完成度の高さを目指してもよいのではないかとの意見が運営委員から出された。例えば白味噌の味わいにもっと丸味を出すための鍋や煮方の工夫もそのひとつ、そして鰹出汁を使うのではなく昆布出汁でやればさらに大阪的になるのではないかといったアドバイスもなされていた。

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撮影/藤澤 了  文/笹井良隆