今月の献立 〈第58回〉 2015年 10月 |
今月の前菜は、炉開き。これはいわば “茶人の正月”。この時期まで使用していた風炉から「炉」開きへと変わることから、早くも心の新年を意味しているのだろう。テーマ食材には、河内蓮根に河内鴨。そして今月は珍しい沖縄の郷土料理を大阪風にアレンジした料理なども披露された。回を重ねる毎に、充実の度を深める大阪料理会に今月も多くの会員が参加した。 |
神田 芳松さん 堺「松(ときわ)」 |
小河原 陽一さん 島之内「一陽」 |
東迎 高清さん 心斎橋「浅井東迎」 |
神田 芳松さんの前菜 | 小河原 陽一さんの献立 | 東迎 高清さんの献立 |
【総評】 これぞ割烹の前菜、との賛辞が多くあった。「さらっとした中に、メリハリも感じられた」、「前菜を食した後に、かえって食欲が増す料理」といった声もあった。また「青竹刺し」など炉開きという前菜の中に込められた、茶人が喜ぶ仕掛けに「面白い」という意見も聞かれた。料理としては、焙り穴子のジューシーな旨さに大きく質問が上がった。意見交換の最後に、料理について神田氏から「無駄・無理・無茶」はしないことが身上という話がなされた。またこの前菜について、上野相談役からは「やりすぎないことの大切さ」の話がなされた後、今後の前菜料理への取り組みとして、このさらりとした神田氏の前菜は見習うべき点が多くあるのではないか、という評が付け加えられた。 |
撮影/藤澤 了 文/笹井良隆