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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第68回〉
2016年 8月

食材をテーマとした発表が多い中、調理法や料理の型そのものに対して一石を投じる発表も見られるようになってきた。今回の試作では、ひとつはいわば料理の供し方への提案であり、もうひとつは昔ながらの料理の型に対しての、異なった視点からの料理提案ともいえよう。ワインに合う日本料理のコーナーでは、ワインの選択そのものへの研究発表も行われた。


杉本 亨さん 杉本 亨さん
浪速割烹「和亨」
ぐるなび
岩渕 貴生さん 岩渕 貴生さん
太閤園「淀川邸」
お店HP
ぐるなび
島村 雅晴さん 島村 雅晴さん
天満「雲鶴」
お店HP
ぐるなび
杉本 亨さんの前菜 岩渕 貴生さんの献立 島村 雅晴さんの献立

◆9月の前菜テーマ「秋意(秋の気配)」

前菜「秋意(秋の気配)」<br />
・蟹の子塩辛小芋<br />
・干し野菜白酢和え<br />
・秋の白扇揚げ 鱧皮 栗 銀杏<br />
・蓮根鱧子明太子射込<br />
・太刀魚小袖寿司

秋意

・蟹の子塩辛小芋
・干し野菜白酢和え
・秋の白扇揚げ 鱧皮 栗 銀杏
・蓮根鱧子明太子射込
・太刀魚小袖寿司


夏から秋へ、そんな季節の変わり目を料理から感じさせてくれる前菜。蟹の子の塩辛と小芋の料理では、渡り蟹の子をほぐし、塩をあてたものを水切し寝かせている。この蟹の子に酒を加え軽く火を入れバターや白味噌などで調味。下茹でした小芋を素揚げにしたものと合わせている。干し野菜を使った白酢和えでは、胡瓜と紅ずいきと干し椎茸が使われている。天日干しされた胡瓜・紅ずいきが共にほどよい食感となっている。白扇揚げには、秋鱧の皮や栗・銀杏をスライス。大阪らしい鱧皮は霜振りし小麦粉を打って烏賊の擂り身を塗り、そこへ栗と銀杏を合わせ白扇揚げとしている。蓮根鱧子明太子射込は、九州の辛子蓮根にヒントを得た一品。湯がいた蓮根を干し、これに熱を入れた鱧子と明太子を合わせたものを蓮根に詰めて揚げている。太刀魚の小袖寿司には、白米に麦が混ぜられているところが何とも新鮮で面白かったといえよう。




【総評】

彩りと味のバランスがともに良い、との賛辞が多く寄せられた。料理への質問は「蟹の子塩辛」に集中した。発想が面白く、食してインパクトも強い。それだけにもっと「蟹の内子を前面に出した料理」にした方がよかったのではないか、といった意見も聞かれた。蟹の子をいわば、アンチョビ感覚で楽しめるこの料理は汎用性が高い、とする評もあった。ただ香り付けに使ったとされるオリーブオイルだが、不要では?との指摘もなされていた。秋の食材を使った白扇揚げへの感想としては、鱧皮を使うのは非常にユニークだが、せっかくの鱧皮の存在感が薄いので、もうひと工夫欲しかったといった意見。辛子蓮根から着想された料理では、味わいとしてのしまりがあればさらに良かったという声もあった。太刀魚小袖寿司の寿司飯に使われた麦は、非常に高評価だった。運営委員からは「昔の食材が新しい世代に継がれていない。今回の麦はまさに今の時代に新しいものとしてもっと取り入れていくべき」との声があがった。最後に総評としては「料理としては申し分ないが、前菜としては各々のポーションが大きすぎた」のアドバイスがなされていた。

  大阪料理会
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撮影/藤澤 了  文/笹井良隆