今月の献立 〈第68回〉 2016年 8月 |
食材をテーマとした発表が多い中、調理法や料理の型そのものに対して一石を投じる発表も見られるようになってきた。今回の試作では、ひとつはいわば料理の供し方への提案であり、もうひとつは昔ながらの料理の型に対しての、異なった視点からの料理提案ともいえよう。ワインに合う日本料理のコーナーでは、ワインの選択そのものへの研究発表も行われた。 |
杉本 亨さん 浪速割烹「和亨」 |
岩渕 貴生さん 太閤園「淀川邸」 |
島村 雅晴さん 天満「雲鶴」 |
杉本 亨さんの前菜 | 岩渕 貴生さんの献立 | 島村 雅晴さんの献立 |
【総評】 彩りと味のバランスがともに良い、との賛辞が多く寄せられた。料理への質問は「蟹の子塩辛」に集中した。発想が面白く、食してインパクトも強い。それだけにもっと「蟹の内子を前面に出した料理」にした方がよかったのではないか、といった意見も聞かれた。蟹の子をいわば、アンチョビ感覚で楽しめるこの料理は汎用性が高い、とする評もあった。ただ香り付けに使ったとされるオリーブオイルだが、不要では?との指摘もなされていた。秋の食材を使った白扇揚げへの感想としては、鱧皮を使うのは非常にユニークだが、せっかくの鱧皮の存在感が薄いので、もうひと工夫欲しかったといった意見。辛子蓮根から着想された料理では、味わいとしてのしまりがあればさらに良かったという声もあった。太刀魚小袖寿司の寿司飯に使われた麦は、非常に高評価だった。運営委員からは「昔の食材が新しい世代に継がれていない。今回の麦はまさに今の時代に新しいものとしてもっと取り入れていくべき」との声があがった。最後に総評としては「料理としては申し分ないが、前菜としては各々のポーションが大きすぎた」のアドバイスがなされていた。 |
撮影/藤澤 了 文/笹井良隆