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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第69回〉
2016年 9月

ひとつの旬であっても、そこに「走り」「盛り」「名残」といった移ろう味への変化を求めるのが日本料理。今回は秋に旬を迎える食材を、担当の三会員が「名残」をテーマに取り組んだ。また今回で5回目となるワインに合う日本料理のコーナーでは、大阪的な視点からの新たな強肴が披露された。


長内 敬之さん 長内 敬之さん
心斎橋「旬鮮和楽 さな井」
ぐるなび
神田 芳松さん 神田 芳松さん
堺「松(ときわ)」
ぐるなび
西野 保孝さん 西野 保孝さん
堺「山海料理 仁志乃」
お店HP
ぐるなび
長内 敬之さんの前菜 神田 芳松さんの献立 西野 保孝さんの献立

◆10月の前菜テーマ「秋懐(名残の秋)」

前菜「秋懐(名残の秋)」<br />
・落鮎棒寿司<br />
  ・秋鱧重ね焼き<br />
  ・紫芋豆乳豆腐<br />
  ・玉取枝豆<br />
  ・吹き寄せ白和え

秋懐(名残の秋)

・落鮎棒寿司
・秋鱧重ね焼き
・紫芋豆乳豆腐
・玉取枝豆
・吹き寄せ白和え


【料理について】

名残の時期を迎えると、食材は「走り」とは異なった調理法が求められる。今回の前菜はまさにその手本のようだと感じた。落鮎の棒寿司は、背開きした鮎を素焼きにし、これを番茶等を使って順を追って時間をかけて調味している。秋鱧の重ね焼きは、鱧をそのまま72℃の湯に70秒浸け、これをタワシで表面の皮を落とすことで鱧皮独特なヌメり等をとっている。後、背開きし葛粉と鱧の子塩辛と共に巻き、粉末あられをつけ焼いている。
紫芋豆乳豆腐は、蒸した芋に吉野葛・豆乳・出汁・酒を合わせて煉り、豆乳にゼラチンを溶かした一番出汁で合わせている。玉取枝豆は、名残の枝豆らしく香りが強く残る配慮がなされている。生のまま莢から豆を出し、莢だけでボイル。この莢の湯を使って豆を煮詰める要領で仕上げる。蒸した石川小芋を裏濾し枝豆に混ぜ玉取としている。最後の吹き寄せには、栗・柿・占地・銀杏そしてチーズが使われている。




【総評】

秋の名残らしく、彩りの美しさが素晴らしい前菜との賛辞が多く寄せられた。料理への質問も様々であったが、特に秋鱧の下処理について意見や質問が多くあった。秋鱧をいわば「湯引き」するというこの手法は、この料理だけでなく秋鱧の料理幅を広げる上でも、非常に汎用性の高いものであるとの評が寄せられていた。料理の味への声としては、落ち鮎寿司の酢飯の酢が少し足りないのではないか。枝豆の香りは素晴らしいがもう少し柔らかさが欲しかったといった声、そして白和えにはチーズは不要かどうか等の質疑がなされた。
最後に名残の料理について今回担当した長内氏は「食材ありき。できるだけ仕事(技)をしない代わりに、丁寧な仕込みをすること」が食材の名残を活かす方法のひとつではないかと述べていた。

  大阪料理会
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撮影/藤澤 了  文/笹井良隆