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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第70回〉
2016年 10月

大阪料理会は今回で第70回を迎えた。開会に先立ち畑会長から、コツコツと積み重ねた70回であり非常に意義が大きい。これまでに発表された料理だけを並べても大阪料理の膨大な財産・遺産となっている。今後もさらに皆で精進努力を続けていこうではないか、の激励がなされた。


久保 是人さん 久保 是人さん
おおさか料理「浅井」
お店HP
ぐるなび
大引 伸昭さん 大引 伸昭さん
大阪あべの辻調理師専門学校
お店HP
前田 武徳さん 前田 武徳さん
東大阪「菜ばな」
お店HP
ぐるなび
久保 是人さんの前菜 大引 伸昭さんの献立 前田 武徳さんの献立

◆11月の前菜テーマ「晩秋茸」

前菜「晩秋茸」

晩秋茸

・滑子茸おろし和え
・薩摩地鶏舞茸煮
・椎茸艶煮海老射込
・煮凍玉子
・障泥烏賊新子 烏賊飯揚


【料理について】

晩秋の味わいを多種多様な茸を組み込むことでひとつの前菜として表現する、面白い試みとなっている。各々の茸の特質をどのように活かしているか、食べ手にとっても興味そそられる趣向だともいえよう。先ずは滑子茸を使ったおろし和え。ここでの滑子茸は、生出汁を調味した旨煮仕立てとしている。大根おろしは絞って出汁で加減。ユニークなのは川蟹。子は湯がき、卵や蟹味噌は白味噌漬けとしている。次に舞茸を使っての地鶏の煮物。濃い旨味と香りを持つ舞茸からエキスを引き出し、いわば地鶏にその旨味を移すといった料理。椎茸艶煮海老射込では、生椎茸なのに乾燥の戻し椎茸のような仕上がりとする試みが見られる。椎茸を昆布や味醂で温度に注意しながら炊き、昆布〆にしたトビアラ海老を、ゼラチンを入れた椎茸の地に菊菜なども寄せて椎茸に詰めている。煮凍玉子は、温泉玉子を黄味と白味に分け、卵白はハンドカッターで昆布出汁・パールアガーで寄せている。卵黄には川海老出汁などの地が使われている。障泥烏賊新子の揚飯は、壺抜きし霜振りしたものに栗おこわを詰め烏賊飯とし蒸した後、さらに揚げているのが面白い。




【総評】

様々な茸を温度差や食感などを考えて巧みに料理に仕上げている、素晴らしい前菜との賛辞が多く寄せられた。中でも舞茸の料理には多くの質問があった。そもそもこの料理のヒントは舞茸を卵料理に使った時に、卵が固まらないことにあったとか。何らかの消化酵素的な効果を期待できる舞茸を反対に肉に合わせることで、地鶏を柔らかくできないか。その狙いが今回の料理となったことを久保氏が詳細に説明した。また今回、茸に合わせた川蟹についての質問も多くあった。畑会長からは「最近ではほとんど使われなくなった川蟹を使い、さらには卵や味噌などを塩辛としても活用する心意気と技は見事」との評が付け加えられた。よく知られる烏賊飯仕立てについては、さらにこれを揚げるという発想が面白く、是非店でも試みたいという声も聞かれた。

  大阪料理会
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撮影/藤澤 了  文/笹井良隆