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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第71回〉
2016年 11月

師走の前菜。料理屋としては最も難しいテーマかもしれない。昔の大阪なら、さしずめ恵方棚を吊って札納めの準備。そして大切なのが商いに欠かせない大福帳、つまり帳簿を新しくすること。12月は来春の縁起を占う月でもあるのだ。そこで今回は「目出度尽くし」がテーマ。次代へ次ぐ和食材には「鯨」が選ばれた。


坂本 晋さん 坂本 晋さん
北新地「味菜」
ぐるなび
荒木 宏之さん 荒木 宏之さん
高槻「araki8823」
お店HP
ぐるなび
松尾 慎太郎さん 松尾 慎太郎さん
北新地「弧柳」
お店HP
ぐるなび
坂本 晋さんの前菜 荒木 宏之さんの献立 松尾 慎太郎さんの献立

◆坂本晋氏、荒木宏之氏の前菜料理/12月テーマ「目出度尽し」

前菜「目出度尽し」

目出度尽し

・海老の奉書巻き 胡麻酢漬け
・蛤の飯蒸し
・神馬草の塩昆布揚げ
・百合根酒饅頭茶巾
・慈姑田楽


【料理について】

本前菜では「海老奉書巻」「蛤飯蒸」「神馬草塩昆布揚」を坂本氏が、「百合根酒饅頭」「慈姑田楽」を荒木氏が各々試作した。海老奉書巻は、串打ちし湯がいた海老を、立て塩した根菜で巻き三つ葉結びとしている。蛤は酒蒸しとし、その出汁を調味して餅米の浸け出汁に。一晩水に浸けた餅米を蒸し器で7割蒸し上げ、その餅米を蛤出汁に漬け込みさらに3割を蒸し上げている。水に浸けて戻した神馬草(ほんだわら)、卵水に炭酸を入れ混ぜ粉を作りそこに塩昆布を加えて揚げている。百合根饅頭では、蒸して裏濾した百合根と酒粕を本直しで伸したものに練乳などで甘味を付け、ひとつを食紅にて色づけしている。蜜とワインで干し葡萄を炊き、岡上げした葡萄を二色百合根で茶巾に。葡萄を炊いた蜜にゼラチンを加え梅型に抜いている。慈姑田楽は皮を剥きナシ割りにし中をくり抜く。抜いた手くずを炒め艶味噌を混ぜ慈姑に射込み揚げている。いずれも、良き年の訪れを願い商売繁盛を祈願するに相応しい目出度尽しとなっている。




【総評】

祝いの席に相応しい前菜である、との賞賛の声が多く寄せられた。中でもかつては祝いの席で珍重された神馬草を使った料理には様々な質問がなされた。今回は干したものが使用されたが、春に出回るなど生の神馬草などについての意見交換などもなされた。蛤に飯蒸しでは「餅米を蒸す」ということへの質問があり、その中で坂本氏は「同じ餅米でも新米と古米では上がりの艶が違う、今回は餅米の新米が間に合わなかったのが残念」とする説明が行われた。慈姑田楽への質問では艶味噌の作り方や、手くずの慈姑も太白油で炒めることで粘りが出ることから、これを艶味噌と共に田楽餡として経緯なども紹介された。 最後に運営委員からは12月の客席では何をテーマにした料理をお出しすればいいのかで迷うところ、そんな意味からも今回の師走の「目出度尽し」は勉強になったのではないか、との評が付け加えられた。

  大阪料理会



特別テーマ 〜次代へ繋ぐ和食材十選〜

◆第1回に選択されたテーマ『蕪(かぶら)骨(ぼね)』『餅(もち)鯨(くじら)』

鯨の食文化を持つ大阪。その鯨の頭部軟骨として知られる「蕪骨」。そしてもうひとつは最も柔らかいとされる頬皮部分を塩茹でした「餅鯨」。特に蕪骨は生産量が極端に少なく現在ではスライス加工したものが瓶詰めにして販売されている。今回は昔ながらの蕪骨を入手し、下処理からの説明がなされた。

蕪骨の味噌漬けと粕漬け
●味噌漬けは、刻んだ蕪骨を塩抜き、粗味噌を調味しガーゼをあて漬け込む。これに丘ヒジキを入れさらに漬け、引き上げたものとイクラを和える。
●粕漬けは、出汁で伸した酒粕を調味し、山葵茎と共に漬け込む。

蕪骨の味噌漬けと粕漬け

<担当会員:坂本晋氏>

下処理は、蕪骨を四つ割にし皮ごと湯がく。外皮が縮み中央部に亀裂が入れば水にとる。そこからカンナ(鰹節削り歯)で薄く削り出し水にさらす。


大阪料理会


撮影/藤澤 了  文/笹井良隆