【総評】作りすぎないのも日本料理の魅力
「いわゆる和製の黒鯛のコンフィ。そこに玉ネギでは甘くなりすぎるので、キャベツと新ジャガを合わせたのは良かった。またジャガイモをおろして煉るという発想も素晴らしい」との評がなされた。次に「中田氏は今回が最初の発表ということで、かなり力が入っていたことは料理を見れば分かる。低温加熱による黒鯛の仕上がりは良かった。ただ、帆立や豆乳など作り込み過ぎたのではないか」。このコメントを受けて、「クセのある黒鯛を活かす狙いはとても良かった。気になったのは料理名が摺り流しとなっている点。最近、人気の手法であることはよく分かるが、それで摺り流しを選んだのなら、摺り流しらしい仕上がりにすべきだったように思う」。これを受けて「私もそこが気になった。日本料理では何を食べさせたいのか、料理人の想いが食べ手に伝わることが大切なのではないか。あれもこれもやりたい気持ちは分かるが、ひとつのことを非常に高度かつ完璧に仕上げるところに美学があると思う。作りすぎないことも大事ではないか」との意見もあった。
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黒鯛ノ松波甘藍(マツナミキャベツ)豆乳摺り流し
「大阪をテーマに、こだわった料理を心がけたい」という中田氏による、“茅渟(チヌ)の海”から着想を得た料理。チヌ=黒鯛ということに加えて、選択した理由には比較的安価というコスト面もある。自身が目指す店の価格帯で扱える大阪食材として着目したそうだ。まず黒鯛を三枚におろし、塩をする。これを米油とともに真空密閉し、80℃の湯に入れる。次に蒸した松波キャベツ・帆立貝・豆乳をミキサーにかけてから火を入れる。新ジャガは摺りおろして煉っている。醤油粕と梅のペーストを作り、黒鯛のウロコは揚げ、木の芽とともに盛っている。
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