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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第112回〉
2020年 8月

8月の新型コロナウイルス感染者数増加を受け、ミナミの島之内エリアの飲食店などは大阪府より営業に関する要請がなされていた。大阪料理会も参加する会員数を10名未満に絞り、感染防止対策を行った上で開催した。



岡本正樹 岡本正樹さん

天の川なかなか

お店HP
ぐるなび
早川友博 早川友博さん

北新地 小嘉津

お店HP
ぐるなび
小川 健 小川 健さん

大阪あべの辻調理師専門学校

お店HP



◆8月のテーマ「大玉蕃茄(ばんか)」  岡本正樹氏による突出し料理

かつては市場に広く出回っていた大玉トマトだが、糖度が低い、早期収穫に向かないなどの理由で、最近は中玉やミディトマトが主流となっている。今回はそんな大玉トマトの魅力を見直してはどうか、ということがテーマとなっている。扱いにくい大玉トマトは冷凍させ、これを自然解凍すれば湯むきよりも扱いやすくなり、トマト水も採りやすい。



【総評】

「彩りが美しく、季節も感じられる」「トマトを豆腐にするという発想がおもしろい」といった賛辞が多く聞かれた。また、中玉か大玉かなど、どのようなトマトを店で使用しているかが話し合われた。運営委員からは「ソースにも大玉トマトが使用されているが、トマト本来の酸味をもっと移す方が良かったのではないか」とするアドバイスが聞かれた。さらに畑会長からは「トマトといえば、その魅力は鮮度。つまりフレッシュ感にある。そこをもっと食べ手に感じてもらえる工夫があればさらに良かった」とのコメントが寄せられた。鱧の揚げおとしでは、トマトとカルピスを合わせるのは驚きの発想という声が多数あった。妙な取り合わせとも思えるが、カルピスは日本の発酵食品であり、夏を演出するものであることを考えるなら、それもまた手法としてあって良いのかもしれない。

・蕃茄豆腐
・鱧 揚げおとし 軽比酢ノ葛掛け

蕃茄豆腐は、冷凍したトマトの皮をむき、裏濾している。これをゼラチンと合わせるのだが、2%と5%で合わせた2つに分け、2%は冷蔵庫へ、5%はボールに入れて水に浸し、固まる直前にメレンゲを加え、型に流して冷凍庫へ入れる。冷凍庫から取りだして切り分けたトマト豆腐に、2%の配合で作ったとろみのあるトマトソースを掛け、オクラ、バジルシード、雲丹を添えている。
もう一品は、裏濾した大玉トマトにカルピスを加え、葛でとろみをつけ、片栗粉・塩をふって揚げた鱧に掛けている。カリッとした鱧の食感とトマトの酸味が何とも夏らしい。


大阪料理会
大阪料理会



◆8月のテーマ「鱧子」  早川友博による献立

夏の時期、おそらく近海の鱧を使っている店なら鱧の子が多く貯まってきていることだろう。
この鱧の子をこれまでとは違った手法で料理に取り入れることができないか、ということをテーマに2品が披露された。

鱧親子椀

鱧子親子椀

ひとつは椀種としての活用法。鱧の子を湯がき、掃除。アラでだしを引き、淡口醤油などで調味し、玉葱と鱧の子を軽く炊き、卵でとじる。その際に分離して出ただしと卵を1:1で合わせ、卵液を作り、卵とじと合わせ、流し函に入れて蒸している。できた玉子豆腐を切り出して椀に盛り、骨切りして皮を引いた半生の鱧、三つ葉に柚子、梅肉をのせて仕上げている。鱧の子の旨みと食感、そして彩りも美しい親子椀となっている。


鱧子唐墨 無花果合せ

【総評】

まず、鱧の親子椀への賛辞が相次いだ。「これは鱧椀の傑作」「鱧椀の上品な味わいが、椀種を潰して食べることで鱧鍋のように変化する」。椀種の素晴らしい出来映えだけでなく、半生に仕上げた鱧のもっちりした味わいも秀逸とする意見も多くあった。運営委員からは「最近は食材に頼って、ただ切ったり、焼いたりするだけの若い料理人が増えている。そんな中で、こうした割烹的な技を駆使した仕事を見ることができて嬉しく思う」との感想が聞かれた。鱧の子の唐墨は、扱いづらい鱧の子を割ることもなく、どうして美しい唐墨形にできるのか、といったことへの質問が相次いだ。畑会長からは「鱧の子の唐墨は素晴らしい。それだけに旨すぎる無花果ではなく、生野菜や昆布〆したものなどと合わせることで良さがさらに引き立ったのではないか」とのコメントが寄せられた。

鱧子唐墨 無花果合せ

二品目は、鱧の子の唐墨。ボラの子ではなく、鱧の子で唐墨もどきを作るのが狙い。鱧の子に塩をして脱水させ、昆布を入れて一晩寝かせる。これをオーブンシートの上で唐墨の形に成形し、サーキュレーターで10日間乾かして仕上げている。完成した鱧の子の唐墨をグレーターですり下ろし、無花果の上に掛けている。


大阪料理会
大阪料理会




◆8月のテーマ食材「鰹」  小川 健氏による献立
鰹のとも揚げ

【総評】

「鰹を揚げた料理を食べたのは初めての経験。ニンニクの香りもほどよく、抵抗なく食することができた」とする意見が聞かれた。衣については「鰹節というよりも、粉鰹を使った方が良かったのではないか」「少し油切れが悪く感じた」とする感想などが寄せられていた。
運営委員からは「鰹の風味もそうだけれど、香りがもう少しあっても良いと思う。また、今回はスダチが添えられていたが、揚げることでスダチをより強く感じられるというのは発見だった」といったものや、「鰹そのものをもう少し厚くすれば、もっと半生感が出たのではないか」などに加え、畑会長からは「とも揚げということよりも、鰹の風味を大事にするにはどうすべきか、その点で工夫を望みたい」といったアドバイスがなされた。

鰹のとも揚げ

タタキもそうだが、鰹料理は半生にすることで風味を引き出し、味わいを愉しむといったものが多い。そうした半生にする調理でも、意外と「揚げる」という手法は試されることがなかった。今回はこれを鰹節との「とも揚げ」として調理してはどうか、ということで披露された。
鰹は皮つきのまま8mm幅に切る。潰したニンニク、土生姜を加えた酒・砂糖などの調味料に20分ほど浸ける。揚げ衣は小麦粉に卵、そして鰹節。180℃の油に約20秒くぐらせる。食感が面白い、少し風変わりな揚げ物となっている。


大阪料理会
大阪料理会





撮影/藤澤 了  文/笹井良隆