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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第114回〉
2020年 10月

大阪府におけるコロナ感染者数は減少へと推移していたが、ここ数日は再度増加傾向。 10月の大阪料理会は前月同様に密を避けて15名で行われた。2名による試作発表には芋類や茸(キノコ)という秋らしい食材が選ばれた。



北野博一 北野博一さん

日本料理 喜一

お店HP
ぐるなび
松尾英明 松尾英明さん

千里 柏屋

お店HP
ぐるなび



◆10月のテーマ「海老芋 自然薯」  北野博一による献立
献立1

海老芋摺り流し 白味噌仕立て

大阪料理を代表する秋の味覚のひとつが海老芋。富田林市の板持地区で栽培される海老芋は一級品とされ、最近では東京にもブランド品として出荷されているようである。今回は、子芋に付いた孫芋を料理店で有効に活用することを狙いとした試作料理。
まずは海老芋摺り流し。海老芋の皮をむいた後、糠で湯がいたものを八方だしで白煮にする。これを裏濾しに二度かけ、さらに摺鉢であたっていく。二番だしで白糀味噌を溶き、これに海老芋を合わせる。椀種には銀杏豆腐。秋らしく、そして精進を思わせる逸品。


献立2

【総評】

「白味噌仕立てで味わえる海老芋は、いかにも大阪料理らしい」といった評が多く聞かれた。参加会員から「白味噌は合わせてすぐに供すべきものか、少し煮合わせて様子をみるべきものか」などの白味噌仕立てへの質問があった。これに対して北野氏は、「白味噌そのものの状態によっても左右する問題。というのも白味噌は夏に塩分が多くなり、秋冬は反対に甘くなる。これは製造する店にもよるが、京都の老舗白味噌店では少なくともそうである。料理人はその時の白味噌の状態を確認しながら煮方を変える必要があるのではないか」との説明がなされた。
また、運営委員からは「白味噌についていえば、大阪は京都のような良質な白味噌が入手困難な時代があった。そこで料理店では購入した白味噌に白米を裏濾したものをブレンドするなど、店ごとの白味噌づくりが行われきた」などの白味噌にまつわる話が紹介された。質問の中には「一般的に白味噌仕立てには溶き芥子(からし)がつきものだが、今回は胡麻が添えられ、薫りや味わいに変化があり、非常に面白かった」との意見に対し、北野氏から「白味噌にむき胡麻を細かく砕いたものを添えるのは茶事でのこと。風味のある胡麻を是非一度、白味噌に合わせて見てはどうか」とのアドバイスがなされていた。

自然薯(山の根) 生海胆(ウニ)
風味つみれ揚げ

もうひとつは自然薯を使った料理。自然薯とはいうものの、山に自生しているものを掘りあげた本当の自然薯が市場に出回ることはほとんどなくなってしまった。今回は北野氏の地元・河内長野で採れる自然薯での試作を予定していたが間に合わず。他県産の半自然栽培のものが使用された。自然薯をすり鉢でなめらかになるまで摺り、これに葛だし(二番だしに葛を加えたもの)、卵白、淡口醤油、最後に生ウニをあたり棒で摺っている。丸にすくい取り、油で揚げ、つみれ揚げとしている。煎りだしに薬味、もみじおろし、芽ネギをのせている。海老芋らしい旨さに生ウニの風味がプラスされ、料理のグレードを引きあげている。


大阪料理会

大阪料理会




◆10月のテーマ「茸 新実蕎麦」  松尾英明による献立
献立1

茸の摺流し 鱚大葉巻き
リコッタあられ揚げ

西欧料理のシャンピニオンスープの味わいを日本料理で再現したいと思い、試作されたのが今回の茸の摺流しなのだそうだ。同量の椎茸とマッシュルームのうち、3分の1を素揚げにしている。そして、残りは包み蒸し焼きに。鍋にだしをはり、淡口醤油で調味。これに揚げたものと蒸し焼きにしたものを入れ、ひと煮立ちさせ、後にミキサーにかけて調味。これを串揚げのタレにするという趣向。串は3種。リコラッタチーズは漬けダレに漬け、あられ揚げ。栗は鬼皮ごと揚げ、鱚は大葉で巻いて薄衣で揚げる。試食後に余韻として残る茸の味わいは、まさに秋そのもの。

献立2

【総評】

「まさに秋の味わい。器づかいの面白さも含めて、多くのヒントがあった」とする声が聞かれた。また「いくらの処理についても学ぶところが多かった」とする意見もあった。調理については、椎茸とマッシュルームの3分の1を素揚げにしたことに対して畑会長から「茸類は油との相性が非常に良い。そうした意味から適量を素揚げにしたのは見事。それだけで多くの旨みを含むものだからこそ、調味は控えることで持ち味が生きてくる。これは西欧も日本も同じではないか」との趣旨の説明がなされていた。蕎麦とろ御飯には、「蕎麦を使用することがないので、季節感を演出する意味で、これから試してみたい食材と思った」「蕎麦切りにはない、蕎麦の風味が実から感じられた」とするコメントなどが寄せられた。

蕎麦とろ御飯 とろろ
いくら醤油漬け 山葵 もみ海苔

もう一品は、新蕎麦の実を使ったご飯。蕎麦の実を水から茹でて硬めに戻す。米の2割程度の蕎麦の実を加えて、米を炊いている。いくら醤油漬けは、塩漬けのいくら1kgに酒を加えてほぐし、掃除をした後、醤油ダレに漬けている。


大阪料理会
大阪料理会





撮影/藤澤 了  文/笹井良隆