【総評】
醤油麹を手作りしている会員も多く、それぞれの作り方が披露された。その中で「塩分の調整が難しい」「1カ月ほど寝かせると、まったりして塩カドもとれ、まろやかになる」という意見が出た。今回の城崎さんによる自家製は、淡口醤油を用いたところがポイント。濃口醤油のような濃厚さがなく、淡口醤油の今までにはない風味を引き出したことに、新しいタレの可能性を会員たちは感じているようだった。また、アクセントに利かせた、セミドライトマトの存在感がいい、という声も聞かれた。
川茸については、今回初めて生を食したという会員が多く、「食感が印象的で、風味もいい!」と総じて好印象。高級食材であることから、あしらいに添えるだけでなく、「もっと存在感を強調しては」という意見も出た。前回同様、精進だしへの取り組みにも注目が集まった。畑会長は、「煎り大豆をだしに使うことで、湯葉や豆乳との相性が増した。焼いた昆布と椎茸の香ばしさも印象的で、とても旨いだしであった」と総評し、精進だしは今後深めていきたいテーマだと締めくくった。
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川茸の冷やし茶碗蒸し
川茸の学名は、水前寺海苔(すいぜんじのり)。九州の一部だけに自生する淡水海苔だ。水前寺海苔として市販されているものは乾燥が主だが、今回、城崎さんが使用したのは生の川茸。福岡県出身の城崎さんは、地元の朝倉市に流れる黄金(こがね)川でのみ収穫される天然の川茸を会員に知ってもらいたいと、今回のテーマに選んだという。
川茸はさっと霜降りし、吸い地に漬けておく。これを冷製の茶碗蒸しにのせ、その風味で食べさせるという趣向だ。茶碗蒸しの味の決め手となるのは、精進だし。昆布と椎茸を酒でふき、100℃のオーブンで1時間30分焼き、昆布は一晩水出ししてから60℃で煮出す。煎り大豆と焼いた椎茸も同様に、水に一晩浸けてからゆっくりと煮出す。この2つのだしを同割で合わせたものが、精進だしだ。
この精進だしと豆乳、淡口醤油、みりん、塩などを卵と合わせ、生湯葉をしのばせて茶碗蒸しの生地とし、これを蒸して冷やす。精進だしを淡口醤油とみりんで加減し、葛を引いてあんにしてかけ、川茸をのせて仕上げる。
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