【総評】
七夕の料理は、煮凝りの麗しさに多くの賛辞が寄せられた。配色、食材の切り方や味の含ませ方、そして、だしの層の透明感。切り出した角の美しさ。これほど完成度高く仕上げるコツはどこにあるのか? 様々な質問が飛んだ。松尾さんは「今回は織柄がテーマだったので色とりどりに仕上げましたが、初夏には白、薄黄色、緑色を主にしています。こうした色合せをすることで季節感が強調されます」と解説。酢味噌には醸造酢ではなく、スダチを使って、清涼感たっぷりに仕上げていることも明かした。畑会長は、「日本料理のコースや会席は、その月ごとのストーリーがあればこそ楽しい。節句や行事を表現した料理にもっと取り組んでほしい」と、会員に提言した。
冬瓜素麺は、その食感のコントラストに、全員が瞠目。冬瓜のサクサク感もさることながら、つるんっモチッとした蓮粉による歯触りに、「初めての食感!」との声が多く寄せられた。また、冬瓜は白い部分だけを使っているとあって、「残りの青い部分は?」という質問があり、松尾さんが「細切りにして湯がき、お椀の青味としている」と答える一幕も。ホワイトセロリの利かせ方が控えめで品がいいという意見もあった。
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冬瓜素麺 鱧炙り ホワイトセロリ 山葵
冬瓜を素麺仕立てにした一品。夏の冬瓜はサクサクとした歯切れの良さが身上。さらに、葛粉よりもコシの強い蓮粉(蓮根からでんぷんを抽出し精製した粉)を使うことで、モチモチ、つるんとした歯触りを生んでいる。
実は、熟れた秋口の冬瓜で試作したことがあったという。「どうも食感が頼りなくて…。身の詰まった初夏の冬瓜で作ってみたら、とても歯切れがよくて。同じ食材でも、季節によって持ち味も質感も変わる。その長所を見極めて調理することの大切さを再認識しました」。松尾さんは熱をこめて語った。
千切りにした冬瓜は蓮粉をまぶし、水溶き蓮粉を加えた湯で茹でる。こうすることで、冬瓜にまぶした蓮粉が散らず、しっかりとまとわりつくのだという。急冷し、水気を切って器に盛り、一番だし・酒・淡口醤油に追いガツオしたかけだしを張る。レアに炙った鱧、ホワイトセロリのお浸し、ワサビを添えて。
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