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担当会員:(有)貴重 広里貴子氏
テーマと狙い:「淡口醤油と乳製品との相性が生み出す新たな味わい」
醤油は製造過程で油分が取り除かれるため、油分を含んでいません。しょうゆのまろやかさは旨味成分や甘味成分からくるものです。しょうゆと乳製品を合わせることで、脂肪分からくるコクやまろやかさにしょうゆの熟成感(メイラード反応)や塩味、発酵でできる酸味は乳製品に味のアクセントと深みを付与することができ、味に一層深みが増します。また、乳製品の独特の風味も抑えてくれます。しょうゆの中でも淡口しょうゆは乳製品の風味を損なわず、味に深みを与え、隠し味・風味付けとして適していると考えています。
ヒガシマル醤油(株) 研究所 真岸範浩氏
担当会員:(有)貴重 広里貴子氏
テーマと狙い:「淡口醤油が創りだす『あんこ』の新たな味わい」
和菓子では、あんこの甘さを引き立たせるために、よく塩が使われます。今回はこの塩を淡口醤油に代えて「あんこと淡口醤油の相性」に挑んでみました。和菓子屋さんではイチゴ大福が人気で、大阪料理会でもイチゴはよく使われます。今回は、あんこに淡口醤油を合わせることで「コク」が生まれ、さらにそこにイチゴの酸味が加わることで味に変化を生み出すことを狙いとしています。あんこと淡口醤油という豆同士が生みだす新たな味の調和がポイントとなっています。
担当会員:(有)貴重 広里貴子氏
テーマと狙い:「チョコレートを淡口醤油で和に取り入れる」醤油とチョコレートの相性は以前に発表されたが、チョコレートはカカオを発酵させて製造されることから、同じ発酵食品を合わせることで、調和が生まれる。さらに、淡口の塩味による甘味の増強、淡口がもたらすメイラード反応によるコクなど可能性は計り知れないものがある。今回の試作はそのひとつ。
試作料理担当:畑島 亮氏
大阪の冬の風物詩として知られてきた牡蠣舟。牡蠣は大阪の食文化には欠くことのできないものであった。そんな牡蠣を大阪湾で畜養する試みが大阪市漁協で始まった。この日、牡蠣の主産地とされる日生漁港から牡蠣を運び、大阪湾で畜養されたものが大阪料理会で、初のお披露目となったのだ。
料理を担当したのが畑島氏。牡蠣そのものの旨みが分りやすいようシンプルに蒸しただけのものを、ヒガシマル醤油のオイスター(牡蠣だし)醤油に龍野乃刻をブレンドしたものを、つけ醤油としている。淡口醤油は熱を加えても、食材を硬くさせにくいので牡蠣料理には最適の調味料といえよう。
牡蠣の供給元である大阪市漁協の畑中課長は「日生の牡蠣は大阪湾で畜養することで一回り大きくなり、美味しさものってきます。また価格的にも非常に安く購入いただけるのも魅力だと思います。今後は加熱用だけでなく生食用開発に向けても取り組みたい」とコメントした。
試作料理担当:島村 雅晴氏
アドバイス:真岸 範浩氏(ヒガシマル醤油研究所)
<島村氏>
淡口醤油の持つ消臭効果の活かし方として、川魚でチャレンジしてみました。淡口醤油と梅酒を合わせることで、淡口醤油が持つ消臭効果を使いながら、食べた時の後にくるクセや臭みを梅香で補う。しかも梅酒の持つ酒成分と甘味成分が旨味を増してくれるというわけです。今回は特にクセがあるとされる鯰(なまず)で試しましたが、成果は上々だったと思います。
<真岸研究員>
淡口醤油が持つマスキング効果。これはずばり生臭みを覆い隠す効果です。醤油には約300種類もの香気成分があるといわれています。これらの香りが他の香り(臭い)を覆い隠してくれるわけです。濃口にもこうした効果はありますが、これが強いと逆に出汁や食材の持つ香気も消し去ってしまう。椀物の出汁によく淡口醤油が使われる意味はここにもあるのです。ちなみに清酒や味醂にも少ないながらこうした効果があり、今回の島村氏の試作はまさに的を得たものといえるのではないでしょうか。
試作料理担当:島村 雅晴氏
アドバイス:真岸 範浩氏(ヒガシマル醤油研究所)
<島村氏>
夏のスイカを余すことなく使うことができないか。その発想から西瓜の汁と淡口醤油を合わせてみました。西瓜にはウリ独特の青臭さのようなものがありますが、これが淡口と合わせることで消えるのです。また西瓜の汁を煮詰めて淡口醤油と合わせたタレは、見事に照り焼きタレとして鮎にマッチします。
<真岸研究員>
スイカというのはほとんどが、水分と糖分とからできています。淡口醤油が持つおだやかな醤油風味は、西瓜の風味を消すこと亡く青臭さだけを押さえて、西瓜を生かしているといえるでしょうね。こうしたことの背景には「対比効果」があります。つまり、主体の味が強く、他方の味をわずかに加えることで主体の味わいがさらに強く感じられるというわけです。
試作料理担当:島村 雅晴氏
アドバイス:真岸 範浩氏(ヒガシマル醤油研究所)
<島村氏>
淡口醤油の淡い色合いはメイラード反応でできます。このメイラード反応からは日本料理に重要な役割を担う美しい色合いだけでなく、食欲をそそってくれる香ばしさも引き出すことができます。今回はこのメイラード反応を抑えたものと、促進させたものを料理にしてみました。
ひとつは胡麻を軽く炒ってますが、反応を極力抑えたものです。もうひとつは、淡口醤油と米麹を使って漬け込んだものです。メイラード反応を料理に生かすことは重要なこと。淡口醤油を活用することでそれが容易にできるということを皆で研究できればいいですね。
<真岸研究員>
メイラード反応とは、アミノ酸(タンパク質)と糖が反応し、褐色物質でありますメラノイジンができる反応のことを言います。醤油の色というのはこの反応によって作られているわけです。そしてこの反応からは、香の成分など様々な風味成分も生じるのです。この風味成分といいますのは、反応するアミノ酸の種類や温度などの反応条件によって異なってきます。食材はいろんなアミノ酸を含んでますので、その合わせの妙によっては新たな香や味や複雑味を生み出すことも可能となるわけです。淡口醤油を使って、様々な食材から新たなうま味や焼き色や香りなどを創りだしていただければと思います。
試作料理担当:島村 雅晴氏
アドバイス:真岸範浩氏(ヒガシマル醤油研究所)
<島村氏>
ヒガシマル醤油の工場を見学させていただいた時に、目にとまったのが醤油の製造過程で
諸味を搾った時にでる醤油粕でした。すでに火が入っているので酵素的なものはないのですが、淡口醤油ならではの風味が残っていると感じました。これを使えば乳酸発酵なく漬け込むことができるので、酸っぱくならない漬け物ができるわけです。今回は2日間漬け込んでみました。酒の肴にちょうどよい加減になっていると思います。
<真岸研究員>
醤油粕は、主に諸味中で分解されなかった大豆や小麦であり、微生物の菌体も一部含んでいます。お酒で生じる酒粕は原料が精米したお米のため、食用として利用されていますが、醤油粕は原料に繊維質も多く含むため食用には利用されませんでした。しかし醤油粕には醤油風味も残っていますので、課題は多くあるものの、こうして日本料理に利用されることは新しい可能性を探るものとして興味深く捉えています。
試作料理担当:畑島亮氏
アドバイス:真岸範浩氏(ヒガシマル醤油研究所)
<畑島氏>
卵黄とオリーブオイルそして淡口醤油、じつはこの3種は極めて相性の良いもの同士なんです。それが3つ集まることで三位一体の味わいを形成してくれたのが今回の試作料理。
卵黄を使い乳化させているので、和製オランデールソースとも言えそうです。オリーブオイルと淡口醤油の割合は2:1。淡口醤油だからこそこの美しい色合いもできました。淡口醤油は本当に無限の可能性を持っています。
<真岸研究員>
オリーブオイルは料理の風味づけに使われることが多く、食材の風味を損なわず引き立てる役割をしています。また魚介の臭みを抑える効果もあり、これらはまさに淡口醤油とよく似ているといえます。
またオリーブオイルが淡口醤油に果汁の風味を付与してくれるのと同様に、淡口醤油はオリーブオイルに適度の塩味や風味を与えているので、結果としてお互いの欠けているところを補いあっていることになるのです。
試作料理担当:畑島亮氏
アドバイス:真岸範浩氏(ヒガシマル醤油研究所)
<畑島氏>
今回は、カカオ55%のクーヴェルチューヌのチョコレートと淡口醤油でソースを作ってみました。冷燻した秋刀魚、その肝にチョコレートと淡口醤油で調味し濃度を見ながら日本酒を少し加えながら煮詰めて裏漉しています。カカオのコクを淡口醤油がうまく引き出しくれ、秋刀魚の肝との絶妙のバランスができたと思います。淡口醤油にはこのように、それぞれの持ち味をうまく結びつける働きがあることがよく分りました。
<真岸研究員>
淡口醤油とチョコレート、接点が全くないように考えられがちですが、いずれも同様に発酵食品なんです。またそれだけでなく甘味と塩味が主体であることから相性はいいと予想しましたが、これほどマッチングするとは考えていませんでした。料理ではカカオの苦味が、淡口醤油ならではの華やかな醤油風味が合わさったことで味に一体感が出てうまく料理をまとめてくれています。
試作料理担当:畑島亮氏
アドバイス:真岸範浩氏(ヒガシマル醤油研究所)
<畑島氏>
今回は、淡口醤油の諸味を使った新味です。旨味成分が詰まった淡口醤油の諸味にクリームチーズを漬け込みました。試作したのは約1ヶ月漬け込んだものですが、塩味のバランスを考えますと1週間程度がもっとも使いやすいように思います。また旨味と塩味を活かすために、和える食材に少し甘味を持った柿と無花果そして胡桃を使ってみました。面白い和え物になったように思います。
<真岸研究員>
7月の大阪料理会で大引先生が鶏肉を醤油諸味漬けにされた際、予想よりも固く仕上がったとの報告がありました。今回も淡口醤油の諸味漬けのクリームチーズですが、塩麹に漬けた時の違いを考えました。醤油諸味と塩麹の大きな違いは糖分にあります。米麹から作られる塩麹は糖分が醤油諸味に比べ高くなります。つまりこの糖分が食材をコーティングするため食材に他からの味が入りにくい反面、水分の抜けが少なく諸味に比べ柔らかくなる。一方、諸味の場合は食塩分が高いことから食材の浸透圧で塩味が強くはなりますが、味が入りやすくなるのです。要するに、淡口醤油では食材のクセを損なわず、旨味を引き出し、しまりを持たせ味に深みが増すということになります。
試作料理担当:畑島亮氏
アドバイス:真岸範浩氏(ヒガシマル醤油研究所)
<畑島氏>
淡口醤油をクリームシチューに入れると、チーズを加えたのと同様なコクが生まれると云われています。こうしたことから今回は、ウォッシュチーズを使った淡口醤油の白和えに挑戦してみました。
ウォッシュチーズを当たり鉢であたり、そこに淡口醤油で調味します。白和えですから色合いも重要です。このままでも面白い白和え衣なのですが、ここに豆腐を加え、さらに甘味となるドライフルーツなどを合わせると、料理店でも使える白和え衣となります。
チーズを和食の中に活かす、それには淡口醤油が重要な役割を果たしてくれることが分りました。
<真岸研究員>
ウォッシュチーズは、熟成過程で表面に塩水やお酒を吹き付けて熟成させます。それだけに表面はリネンス菌と呼ばれる微生物の発酵により独特の風味が生まれます。これはじつは納豆に近いのです。そこで相性を探ってみると、淡口醤油が意外にも、チーズの風味を損なわない。醤油風味が全面に出ない。しかもマイルドな味わいに適度なしまりをつけて味に複雑味を持たせてくれることが分ったのです。
試作料理担当:畑島亮氏
アドバイス:真岸範浩氏(ヒガシマル醤油研究所)
淡口醤油と白ワイン。この全く接点のなさそうな2つには、じつは素晴らしい相性があったというのが今回の新味。元来、この2つには共通点が多い。例えば、淡口醤油に対して濃口醤油があるように、白ワインには赤ワインがある。そして食材との相性で見ると、淡口醤油と白ワインは、魚介では「さっぱりした白身魚」「脂身の少ない肉」などが合うのに比べ、濃口醤油と赤ワインは「脂身の多い赤身魚や肉」との相性が良い。
つまり「淡口醤油と白ワインの相性では、互いに味を補い、味のバランスが整う」(真岸研究員)。さらには、淡口醤油は白ワインの美しい色合いにもマッチし、料理の仕上がりも美しい。また「淡口醤油も白ワインも共に発酵食品であり、酵母による華やかな薫りで素材を生かす点で共通している」(真岸研究員)と言えよう。
今回はこうした発見をもとに、畑島亮氏に試作を担当いただいた。