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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第44回〉
2014年 8月

酷暑と呼ぶに相応しい7月が過ぎ去り、ようやく秋らしさが感じられるようになった8月の定例会。前菜は観月をテーマに、様々な「月見」の風情が料理で表現された。テーマ食材には、秋茄子や真子鰈が。そして先月と同テーマとはなったが、鰻を夏ではなく、秋の魚介という観点から見直した新しいアプローチが披露された。また今回からは、新企画として大阪料理には欠かせない淡口醤油の新しい可能性を探る試みが行われた。


大引 伸昭さん 大引 伸昭さん
大阪あべの
辻調理師専門学校

お店HP
竹内 一二さん 竹内 一二さん
竹うち 本店
お店HP
ぐるなび
杉本 亨さん 杉本 亨さん
浪速割烹 和亨
ぐるなび
大引 伸昭さんの前菜 竹内 一二さんの献立 杉本 亨さんの献立

◆9月の前菜テーマ/観月乃頃

前菜「観月乃頃」<br />
・甘鯛月環 海胆 旨出汁ジュレ<br />
  ・鶏ノ豊年焼き<br />
  ・車海老薯預 生姜甘酢漬け<br />
  ・茄子旨煮湯葉含め煮 栗クリーム掛け<br />
  ・胡麻団子

【料理名】観月乃頃

・甘鯛月環 海胆 旨出汁ジュレ
・鶏ノ豊年焼き
・車海老薯預 生姜甘酢漬け
・茄子旨煮湯葉含め煮 栗クリーム掛け
・胡麻団子


月を愛でる観月。名月の表現は、食においても食材や形に因んで、様々な呼び方がなされている。例えば丸い里芋に因んで「芋名月」や「豆名月」、そして「栗名月」といったものもそうだろう。今回の前菜料理では、こうした名月と食との色々な拘わりを「円」というイメージの中で表現したもの。甘鯛を使った月環料理では、煉り玉(卵黄・白味噌・砂糖)に具材を入れたものを甘鯛で包み、甘鯛出汁のジュレが掛けられている。
鶏ノ豊年焼きは、前回に試食で好評だった「淡口醤油の諸味」を使って醤油麹幽庵を漬地にしたもの。中には赤飯が包み込まれている。車海老薯預は、寿司仕立て。里芋と山芋を主にした黄身寿司、車海老は塩茹で後に腹開きとし黄身寿司を包み込んでいる。
茄子旨煮湯葉含め煮では、栗蜜煮をペーストにしたものを米油や豆乳等で調味し裏漉し栗クリームを作り、揚げた茄子と湯葉に掛けている。胡麻団子は中華的な料理を、和の心に直したもの。浮き粉や白玉粉で作った胡麻団子、これに百合根餡が包み込まれている。餡を仕上げに柚子茶を加える発想は面白く、日本的だといえよう。



【総評】

前菜料理は、いわばこれから始まる料理へのプロローグ。多彩な名月料理を愛(食し)でながら、次に出てくる料理を待つ。そんな楽しい語らい(話題)を提供するのも前菜料理の役割。今回の料理はそういった意味で素晴らしいとの意見が多くあった。それぞれの料理評では、包み込まれ丸状になった前菜が多かったが、それだけに食した時に、外側と内部の食感のバランスが気になったという声があった。また、中華でおなじみ胡麻団子だが、
これなら和食の一品として面白いものになるのでは、との感想もあった。最後に、運営委員からは名月尽くしはとても楽しいけれど、月では朧月など日本らしい、いろんな情緒の表現方法がある、円だけにこだわらずこうした情感を料理で表現してみるのもいいのではないか、との提案もなされた。

  シーン1 シーン2


撮影/藤澤 了 文/笹井良隆